第三話(表裏)
同時刻、王宮。
王宮に戻っていたノクト達の前に魔法陣が浮かび上がると、魔法陣から放たれた光の柱からイプシロンが現れた。
「その傷はどうしたのですか⁉」
シルフィーは突如現れたイプシロンの姿を見てお揃いた。
無理もない。イプシロンは全身ところどころ灰化していた。
「魔王様からこれを渡すように言い渡され、その途中で傍観者との戦いがありました」
シルフィーの言葉に素直に答えたイプシロンは懐から紫色の結晶を手元に取り出した。
イプシロンが取り出した結晶は禍々しい魔力が可視化できるほどの濃度で詰まっていた。
「これをノクト様に渡すよう魔王様から言い渡されました」
イプシロンはノクトの方へ歩いていき手に持っている結晶をノクトに渡す。
ノクトはイプシロンから渡された結晶を受け取ると、結晶委触れた直後、結晶に触れた箇所から結晶に蓄積された魔力がノクトの体内に吸い込まれていく。
前に魔王の魔力の魔石が壊れた時に魔王の魔力を吸収した時と似ているがその時とは体の中に吸い込まれる魔力の濃度と量がけた違いだった。
「これは、魔王の魔力か?」
ノクトは以前にも起きた事象にあまり驚きを見せない様子でイプシロンに尋ねた。
イプシロンはノクトの質問に「その通りです」とだけ答えた。
「また何で魔王がオレに魔力を分けているんだ?」
「それは精神世界で傍観者の邪魔をされず魔王様と謁見するためです」
ノクトの質問に答えたイプシロンに他の勇者三人は眉をひそめた。
「というと、ノクトは以前にも魔王と精神世界で会った事があるのですか?」
シルフィーは若干語気を強くしてノクトに質問をした。
「あぁ、不本意だったが誰かの思惑か夢の中で魔王を会った事がある」
シルフィーの質問に答えたノクトはシルフィーを一瞥した後すぐに視線をイプシロンに戻す。
「だが傍観者に邪魔されないためだけならこの魔力量はいらないはずだ。どうして魔王はこれだけの魔力を俺に渡した?」
「それは魔王様に直に聞いて下さい」
イプシロンがそう言うとノクトは体がふらつく感覚を覚えた。
そしてノクトは王宮の床へと倒れた。