第六話(裏)
「逃がしたか」
閃光が落ち着くと傍観者は目の前の状況に舌打ちをした。
視界には灰化した悪魔が一体地面に落ちていた。
「上手く転移できたようですね」
この場にいる悪魔——プサイはイプシロンが無事手に魔術を発動して目的地へ転移した事に安堵した。
プサイの様子とは真逆で傍観者はプサイの言葉の後に苦虫を噛み潰した表情で舌打ちをした。
「残念でしたね。傍観者」
「あぁ、残念だったよ。だからこの憤りは悪魔であるお前にぶつけるとしよう」
傍観者は言葉にした後、光の球を数多に顕現してプサイの方へ放った。
顕現された光の球達は一斉にプサイの元へ飛んでいくとプサイは空中に浮いて光の球達から避ける。
光の球達はプサイが避けた咆哮へ軌道を変えて追尾する。
プサイは空中を移動しながら光の槍をいくつも顕現して追尾してくる光の球達へ放った。
放たれた光の槍は追尾してくる光の球達に衝突すると閃光を上げながら光の槍と光の球が対消滅していく。
しかし光の槍が消滅するよりも光の球の数が多く、光の球全弾を対消滅する事はかなわなかった。
消滅しきれなかった光の球はプサイの元へ飛んでいくとプサイは咄嗟に黒の外套で身を守るように体を覆った。
プサイに着弾した光の球は目を焼く程の閃光を上げて周囲の風景を真っ白に染め上げた。
真っ白に染め上げた閃光が落ち着くと空中にはプサイの姿があった。
しかし無傷というわけにはいかず黒の外套と一刈腕が白い灰のように崩れ落ちていた。
「咄嗟に外套で防いだようだが、そんな程度の防御で私の攻撃を防げると思ったのか?」
傍観者はプサイを一瞥してすぐに手元に光の剣を顕現した。
「まさか。腕一本灰化しただけで済んだのは幸運でした。ですが、このまま戦いが長引けば私は完全に灰化するでしょうね」
「分かっているのになぜ私と戦う?」
傍観者はプサイの言葉に疑問を抱くとプサイに言葉の師にを尋ねた。
「私達の目的はイプシロンをノクト様の元へ無事に転移させる事。シグマと同じで私達が灰化しても死ぬわけではありません」
「だから先程から捨て身で時間稼ぎをしていたわけか」
プサイが質問に答えると傍観者は苛立ちを覚えた表情を浮かべて光の剣の切っ先をプサイに向けた。
「だが悪魔が転移した目的地は分かっているこのまま後を追えば済む問題だ」
光の剣の切っ先を向けた傍観者はそう言うと次の瞬間姿が消えた。
そして次の瞬間傍観者はプサイの胸に光の剣を突き刺していた。
「これで邪魔者はいなくなった」
傍観者はプサイに突き刺した光の剣を引き抜くとプサイの胸が徐々に白く灰化していった。灰化していくプサイの体は脆く崩れていった。
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