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第六話(裏)

 ノクトが外に出てからしばらく経った。

シャルはテーブルの傍の椅子に座っていた。


「お願い。みんな無事に帰ってきて」


 シャルは椅子に座ってから手を組み祈るようにして同じ事を何度も呟いていた。

 エドワードからはっきり宣告された戦力外通告に、シャルは自身の力不足をここまで呪った事はなかった。


 ノクトはエドワードがとても心配でみんなの帰りを待っていてほしいから厳しい言葉を言ったと擁護していたが、エドワードが言った足手まといの言葉に言い返せなかった自分が悔しかった。


 もしアンリではなくシャルが攫われていたらエドワードはアンリを足手まといと絶対言わないはずだ。


 シャルとアンリは瓜二つの双子で見た目だけなら一目見るだけならどちらが誰か当てるのはほぼ不可能なほど酷似している。

 しかし、こと神聖術や魔術などの神秘の力の類に置いて姉のアンリに勝ったことが一度もない。


 アンリに隠れて今まで勉強した神聖術や魔術等を何度も予習復習し、アンリより何倍何十倍も努力したという自負もシャルにはある。しかしアンリはシャルの努力を軽く超える才能でシャルの上を簡単に超えていく。


 シャルは感じていた。


 努力をアンリより何十倍も重ねてもアンリを超えたことがない事実は、幼い頃からエドワードの下で神聖術と魔術等を学んでいたシャルには感じずにはいられない。


 エドワードの神秘の力を教える対象が徐々にアンリ中心にシフトしつつあること。

 それに追いつくまでシャルがどれだけ努力しているかアンリは知らない。というかシャルは知られたくなかった。


 同じ双子で同じ容姿なのに、才能だけはアンリにだけ生まれる前に吸い尽くされたかのようにシャルの実力を簡単に超えていくアンリが自身の努力を見て哀れまれたくなかった。


 みんなが大変な時に自分の心の中にある黒い感情が溢れ出てこないように黒い感情を掻き消すためにみんなの無事を祈り呟く。


 そしてシャルが祈りを捧げて一時間以上が経つ。


 シャルが待つ家の扉が開かれる音がした。

 シャルは扉が開く音に期待を膨らませた。そしてシャルは扉に向かって速足で近付いた。


 家の扉が完全に開くとそこにはノクトとエドワード、アンリの姿ではなかった。

 家の扉を開けたのは全く別の人物だった。

 純白の甲冑を纏った体格の良い男性だった。無骨という言葉が歩いているという表現が近いと感じるその男性が家の扉を開けると真っ先に目に入ったのはシャルだった。


「だ…誰ですか?」


 シャルは予想外の客人に怯えを隠せなかった。


「エドワード・エレンザークはいるか?」


 シャルの質問に聞く耳を持たす甲冑の男性はシャルに質問する。


「誰ですか?」


 甲冑の男性への恐怖を押し殺しシャルは再度質問した。


「お前の質問に答える義務はない。エドワード・エレンザークはどこだ?」

 甲冑の男性は有無を言わせぬ雰囲気を漂わせながらシャルの質問を拒否する。


「お養父とうさんなら今外出中です」

 甲冑の男性の雰囲気に気圧されたシャルは自分の質問を控え甲冑の男性の質問に答えた。


「部屋に上がらせてもらう」


 甲冑の男性は住人のシャルの許可を取らず勝手に家の中に踏み込んだ。

 そして甲冑の男性は家の中に上がると部屋の中の家具を漁り出す。


「何するんですか⁉」


 甲冑の男性の客人とは思えない無礼な行動に異を唱える。

 そんなシャルの言葉に耳を貸さず部屋の中を物色していく。


「彼奴め、どこに隠した⁉」


 甲冑の男性は目的の品が見つからないせいか苛立っていた。

 シャルは甲冑の男性の無礼に我慢できなくなり甲冑の男性にしがみつき家具から離そうとする。


「やめてください!」

「邪魔をするな!」


 甲冑の男性はしがみつくシャルを力ずくで引き剥がし突き飛ばした。突き飛ばされたシャルは壁に叩きつけられた。


「私の邪魔をするという事は国の意向に逆らうという事だぞ!立場を弁えろ平民の小娘如きが!」


 シャルを振り解いた甲冑の男はシャルがしがみついて邪魔した事に怒声を上げた。

 壁に叩きつけられたシャルは全身に痛みが奔る。


 甲冑の男性は痛みに悶えるシャルなどお構いなしに部屋を物色し、さらに部屋の奥へ進む。甲冑の男が進む先にはエドワードの書斎がある。


 シャルは体中に奔る痛みを無視して再び甲冑の男性にしがみつき甲冑の男性の動きを邪魔する。


「そこはお養父さんの書斎です!勝手に入らないでください!」


 エドワードの書斎に入ろうと書斎の扉の取っ手を掴もうとした甲冑の男性に対しシャルが今まで出したことのないような大きな怒声を放った。


「先程も言ったが、私の邪魔をするという事は国の意向に逆らう事だ。これ以上邪魔をするなら貴様を殺す」


 甲冑の男性は再びしがみついているシャルを引き剥がし突き飛ばす。

 突き飛ばされたシャルは突き飛ばされた衝撃で廊下に倒れこんだ。


 甲冑の男性はシャルを突き飛ばした後書斎の扉の取っ手を掴んだ。取っ手を掴んだ瞬間、扉の取っ手から金色の炎が噴き出し、取っ手を掴んだ甲冑の男性の手に燃え移り甲冑の男性の籠手ごと手を燃やす。


「ぐぎゃああああぁぁぁ!」


 甲冑の男性は突然自分手が燃えている事に対しての驚愕と手が焼けている激痛に悲鳴を上げる。

 甲冑の男性は燃えている籠手をすかさず外し燃えている手に神聖術で火の鎮火と火による火傷の治癒を施した。


 甲冑の男性の手に移った金色の炎は神聖術により見る見るうちに鎮火され炎の熱で爛れた皮膚が時間を巻き戻したかのように元通りの正常な皮膚に治癒していく。

 火傷が完全に治癒すると甲冑の男性はシャルを睨む。


「これはどういうことだ⁉」


 甲冑の男性は書斎の扉に施された仕掛けをシャルに怒声交じりで問いかけた。

 シャルもこんな事が起きるなど想像もしていなかった。シャルも書斎の扉の取っ手を触った事はあるがこんな事が起きた事など一度もない。


「……知らない」


 シャルはこの現象に怯えながらも自分も知らない事を伝えた。


「嘘を吐くな!黙秘するなら貴様を殺す!」


 甲冑の男性は腰に携えている剣を鞘から引き抜き、手に持った剣の切っ先をシャルの目の前に向けた。甲冑の男性は怒り心頭の様子で顔に青筋が浮かんでいる。


 切っ先を向けられたシャルは凶器を向けられた恐怖に震えるも甲冑の男性を見る青い瞳は敵意を向けた。


「なんだその目は。私に対してその目を向けるなど万死に値する!」


 甲冑の男性はシャルに向けた剣の切っ先を放し突きの構えをする。そして月の構えをした甲冑の男性はシャルに向けて切っ先を刺突する。


お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

今回も読んで頂き誠にありがとうございます。

今回からシャル視点の物語が始まります。

二話連続投稿ですので良ければ次話も読んでください。

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