第二話(裏)
イプシロンは悪魔の根城に戻ると魔王のいる部屋へ歩いて行った。
魔王のいる漆黒の部屋へ到着したイプシロンは目の前にいる金髪の少女——アンリの体を借りた魔王に視線を向けた。
「魔王様。仰られた通り勇者達に聖典の原本を渡してきました」
「ご苦労だった。イプシロン」
イプシロンに労いの言葉をかけた魔王はイプシロンと目を合わせた。
「それで勇者達の様子はどうだった?」
「やはりまだ私達を信用してはいなかったです。魔王様が見つけた聖典の原本も最初疑っていました」
「仕方あるまい。今まで敵だと思っていた者から聖典の原本と言われて渡されれば疑いの一つもするはずだ」
イプシロンの語気が若干の苛立ちを含むと魔王はその事に感付いたのか勇者達を擁護する言葉を口にした。
「それに聖典の原本を勇者に無事渡せたのだ。今回の目的は果たせた」
「しかし、このままでは勇者達との溝は埋まりません」
イプシロンは魔王に対して懸念点を上げた。
それはこれから共に戦う味方同士にあってはならないものだ。
「分かっている。我も器を手にした。これなら本来の力を使う事ができる」
そう言うと魔王は掌から紫色の結晶を顕現した。素の結晶には高濃度の魔力が蓄えられていた。
「これをノクトに渡してきてくれ」
魔王は顕現した紫色の結晶をイプシロンに渡した。
「これは……」
イプシロンは手に取った結晶を見てすぐに結晶の正体を悟った。
「頼むぞ。おそらく傍観者もこれを狙ってくるだろう。一刻も早くノクトにこれを渡しに行くんだ」
「御意のままに」
魔王から指令を下されるとイプシロンは魔王の部屋から出て行った。
お疲れ様です。
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