第四十話(表裏)
シルフィーが悪魔と話をしている間、ファルコとラザフォードは塔の中の片隅で塔の中の者達を傍観していた。
「こんな片隅で何してるんだ?勇者ファルコ?」
「それはこっちの台詞です。勇者ラザフォード。勇者シルフィーやあの魔王の子孫が積極的なだけです。僕は悪魔と話す事なんてないだけです」
ラザフォードの言葉にファルコは渋面しながら返事を返した。
「そう言う勇者ラザフォードも何で僕のところに来たのですか?」
「そんなの俺も話し相手を探してたからだ」
「そうですか。生憎ですが今は誰とも話したくないので」
「今回の闘いで何も役に立てなかった事を気にしているのか?」
ラザフォードの指摘にファルコはさらに顔を渋面させる。
図星のようだ。
「それなら俺も同じだ。今回の闘いで何一つ力になれなかった」
「悔しくないのですか?」
ファルコは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらラザフォードに尋ねた。
「悔しいって何がだ?」
「今回の闘いで何一つ力にならなかった。魔王がいなければ今頃僕達は皆殺しになっていました。勇者の紋章を転写して強くなったはずなのに敵に刃も立たなかった」
「なんだ。そんな事か」
「そんな事?」
ラザフォードの言葉にファルコは眉をひそめた。
ラザフォードも眉をひそめたファルコの様子に気付いていたのか続けざまに言葉にする。
「俺達は今生きてる。死んでしまったら何も残らない。生きているだけでも儲けものらと思うぜ」
ラザフォードの言葉にファルコは消化しきれない表情を浮かべるがラザフォードの言っている事も理解できる。
死んでしまってはそこで終わりだ。
生きているだけで勝ち。
それは理解できるがファルコの中にはしこりが残った。
勇者の紋章を転写して六つの紋章を宿しているにもかかわらず敵には歯が立たなかった。
そして今までの敵であった魔王の力がなければファルコだけでなくここ仁田是認が全滅していた。
その悔しさで喉元に詰まるような不快感がファルコに残っていた。
「そろそろ塔から出ないとな」
「そうですね」
そう言うとラザフォードは聖剣を構えて壁に向かって聖剣術を放った。
放たれた聖剣術の炎が陽の壁に衝突すると爆風と共に煙が周囲に吹き荒れた。
「⁉」
ラザフォードは驚愕した。
塔の中へ入る時には崩れたはずの壁が今の聖剣術で傷一つ付いていなかった。
ラザフォードの傍にいるファルコも先程のラザフォードの聖剣術で傷一つ付かない壁を見て目を大きく見開いた。
『ようやく気付いたか。私の駒達よ。お前達はここに閉じ込められたのだ』
塔の中に響く声は塔の中にいる者達に話しかけた。
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