第二十一話
ノクトが目を開けると白い天井が見えた。
闘技場の中央は天井が吹き抜けであったからここがレイノスと戦った場所ではないとすぐ分かった。
ノクトは体を起こそうと力を入れると全身に激痛が奔る。レイノスとの戦いで全身打撲や全身火傷を負ったノクトは体中を見ると全身に包帯が巻かれている。
軟膏が塗られているのか包帯が巻かれている部分から薬の臭いがする。
ノクトが気を失っている間に誰かが手当てをしてくれたらしい。
ノクトは痛みを我慢しながらゆっくり体を起こして周りの風景を見る。医療器具や薬品が棚に並び、ベッドが綺麗に陳列している。
ノクトが寝ていたベッドの横にはレイノスが椅子に座っていた。
「ようやく起きたか」
「ここは?」
ノクトは周りを見回しながらレイノスに今いる場所がどこか質問した。
「王都の診療所だ。お前が倒れてから俺がここに運んだ」
レイノスはノクトの質問に答えた。
ノクトに声をかけたレイノスの片耳にはガーゼが張られていた、
「その耳のガーゼは?」
「あぁ、これか。不本意だがお前の最後の風魔術がかすってしまった」
ノクトがレイノスの怪我を聞くとレイノスは顔色一つ変えず答えた。
「それって」
「俺に傷一つ与えたから、お前の弟子入りを認める」
「よっしゃぁ!っ痛……」
レイノスが弟子入りを認めるとノクトは両手で握り拳を組んだが握り拳を組んだ瞬間、全身に痛みが奔った。
「俺が手加減したとはいえお前は全身打撲と全身火傷を負ったんだ。いくら魔王の血族で傷の治りが速いからって無理するな」
レイノスは痛みで悶えるノクトに安静にするよう注意をかける。
「でもこれであんたの弟子になったって事でいいんだよな」
ノクトは嬉しそうにレイノスに尋ねる。
「俺は最初エドワードの頼みだろうが弟子に取る気はさらさらなかった」
レイノスはノクトに自身の考えを吐露した。
「今まで俺に弟子入りを懇願した奴らは自身が強くなるために弟子入りしたいと言っていたが、何のために強くなりたいか答えられなかった、もしくは言葉だけの奴らだけだった。だがお前は強くなる目的を持ち、それが言葉だけじゃないと証明した」
ノクトはレイノスとの戦いで自身が強くなる目的を語りレイノスに傷を与えてそれが言葉だけではないと証明した。
「だから仕方ないが、エドワードの言う通りお前の弟子入りを認める」
レイノスはノクトの弟子入りの許可をノクトに伝えた。
「だからこれからは俺の事をあんたじゃなく名前で呼ぶように」
「分かったよ。レイノスさん」
「分かれば良い。これから修業を付けてやる。ノクト」
ノクトとレイノスは互いに名前で呼び、レイノスがノクトに差し伸べた右手にノクトは握手した。
一週間後——
「たった一週間で全身の怪我が治るなんて貴方の体はどうなっているんですか?」
診療所の医師がノクトの体に巻かれている包帯を外している時にノクトに尋ねた。
ノクトは自分が魔王の血族と公に言えないので、昔から傷の直りが早いと入院当初から伝えていたが一向に信じてもらえないままだった。
それもそうだろうとノクトは心の中で思った。いくら傷の治りが早いからって、全身火傷と全身打撲の重傷者が一週間という短期間で完治するなんていくら傷の治りが早い人でも早すぎる。
ノクトは医師の疑いの目から背を向けたまま全身の訪台を外し終えた後、すぐに診療所を出た。治療費や入院費はレイノスが先に支払いをしてくれていたのでノクトはすぐに診療所から出る事ができた。
ノクトが診療所を出ると診療所の門に寄り掛かった人物を見つけた。
「来てたんですか。レイノスさん」
紺色の外套、紺色の髪、紺色の瞳の男性——レイノスがノクトを出迎えていた。
「お早い退院だ。流石の治癒力だ」
「そのせいで医師から疑いの目で見られましたよ」
ノクトの愚痴にレイノスは相変わらず表情一つ変えなかった。
「まあ、これから俺との修行でお世話になる事が増えるんだ。仲良くしておいた方がいいぞ」
「それって、修業で毎回ボコボコにするって事ですか?」
レイノスの不穏な言葉にノクトは少し顔色が青ざめた。
「俺に弟子入りする時の威勢はどこへ行った?傷の治りが早いんだから多少厳しく修業を付けても修業に支障は出まい」
「弟子に厳しい師匠なもんだ」
ノクトは今後自分に身に不安を感じ、溜息を吐いた。
「これからノクトには聖剣術の使い方と魔術師同士の戦い方を重点的に教えていく。お前の決意が本物ならついて来いよ」
レイノスはノクトを試すような口調で話した。
「分かりました。師匠」
ノクトは真剣な眼差しをレイノスに向けた。
そしてノクトとレイノスは診療所の門から出た。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
明日の投稿で物語の視点が変わりますので良ければ感想と評価をして頂けると幸いです。