第三十八話(表裏)
魔王との会話を終えるとノクトは勇者三人の元へ歩み寄った。
「お話はすみましたか?」
ノクトが近付いてくるとシルフィーは魔王との対話を終えたのか尋ねた。
「あぁ」
シルフィーの質問にノクトは一言で答えた。
「何を話したのですか?」
「魔王達が望む『より良い世界』とやらの話を聞いてた」
「『より良い世界』ですか?」
シルフィーはノクトが口にした気になる言葉を反芻していた。
シルフィーがノクトの言葉を繰り返した後ノクトは「あぁ」とだけ答えた。
「その世界とはいったいどんな世界なのか聞いたのですか?」
「聞いてない。途中で聞く気が失せたから話を中断した」
ノクトが途中から話を聞いてなかった事を口にすると、シルフィーはそれ以上何も言わずにノクトの傍を離れた。
ノクトの元から離れたシルフィーはその足で悪魔達の元へ歩み寄った。
「悪魔の皆様。お話したいことがあります」
悪魔の目の前に来たシルフィーは悪魔達に声を張った。
シルフィーが傍に来て声を出すと悪魔達はシルフィーを見た。
「勇者が何の用ですか?」
「あなた方に提案があります」
シルフィーはそう言うと悪魔全員がシルフィーの顔を見た。
「提案……ですか?」
シルフィーの言葉に悪魔全員が訝しい表情を浮かべた。
「あなた方が私達勇者を敵に回して魔王を復活させてまでして叶えたい平和というものを教えて下さい。その平和という物に私達が納得できればこれ以上あなた方の邪魔をしない。むしろ協力できる事なら尽力します」
シルフィーの言った言葉に悪魔全員が驚きの表情を浮かべた。
勇者からの提案でここまで悪魔達に譲歩した提案など前代未聞だったからだ。
「その言葉を信用できる根拠を教えて」
悪魔達がシルフィーの話に釘付けになる中、シャルがシルフィーの元へ歩み寄りながらシルフィーが言った提案の根拠を求めた。
「もしこちら側が提案を破った時には私をどうとでもして下さい。拷問しようと殺そうと好きにして下さい」
シルフィーはシャルを見ながら言葉を発するとシャルは小さく息を吐いた。
「あなたって本当にバカね。それが嘘偽りない言葉ならどうかしてるわ」
「私も一国の長です。世界がより良くなるのなら手を貸すのが私のすべきことです」
小さく息を吐いたシャルにシルフィーは真剣な表情を浮かべたままシャルの目を見た。
「いいわ。私達の望む正解を教えてあげる」
そう言うとシャルはシルフィーに向けて指差した。
シャルの指差した指先から光が灯るとシルフィーは視界が吸い込まれるように指先を凝視した。
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