第三十四話(表裏)
アンリの体を借りた魔王とノクトは塔を出て晴天の空の下へ出た。
「ここなら我とノクトだけだ。ゆっくり話ができる」
「なぜ俺をここに呼んだ?」
魔王の後に付いてきたノクトは二人きりで話がしたいと言い出した魔王に二人で話がしたい理由を尋ねた。
「まずはノクトに謝らなければならない。アンリエットの体を我の器にした事、申し訳ないと思っている」
魔王は頭を下げてノクトに謝罪した。
「よく俺が苛立っていた理由が分かったな」
ノクトは魔王を見ている目元が鋭くなっていた。その事に気付いた魔王はアンリの体を借りた事に謝罪した。
「分かるさ。ノクトが探していた人が敵の我に体を器にされているのだ。ノクトが心の中で憤慨しているのもお見通しだ」
魔王はアンリ越しにノクトの眼を見た。アンリを見ているノクトの表情は眉をひそめて瞳の奥に激昂の色が見て取れた。
「だったらとっとと早くアンリの体から出て行け」
ノクトは鋭い視線を魔王に向けるとノクトの言った言葉に魔王は目を閉じた。
「それは無理だ。アンリの体と我の力が完全に馴染んだ。我が無理にアンリエットの体から出てしまえばアンリエットは死んでしまう」
「それを分かってアンリの体に乗り移ったって言うのか?ざけんじゃねえよ!」
魔王の言葉に苛立ちを押さえられなくなったノクトは声を荒げて魔王に憤慨した。
「怒らないでノクト」
アンリの口調が途端に変わるとアンリは目を開いてノクトを見た。
先程までの魔王の魔力が宿っていた目ではなく数年前の時と同じ無邪気な瞳に変わっていた。
「アンリ……なのか?」
「そうよ。久しぶりね。ノクト」
アンリは無邪気な微笑を浮かべた。その様子にノクトは目の前の人物が魔王ではなくアンリになっていたことに気付く。
「魔王が私の体を器にしたのはちゃんとした理由があるの」
「理由?」
アンリの言葉にノクトはまた新たな疑問が浮かんだ。
「私に刻まれた英傑の紋章の力は私の体では耐え切れないほど強くなってたの。それを抑えるのに勇者の紋章を全て私の体に移植して英傑の紋章の力を制御できるようにした。それでも抑えきれなかった力を魔王が私の体を器にして均衡を保っているの」
アンリは魔王が自身の体を器にした理由を伝えるとノクトは納得しきれない表情を浮かべた。
「それに私の力で世界をより良く変えられるのなら魔王の器になっても構わない」
「シャルも言っていたが『より良い世界』って何なんだ?」
アンリの言葉にも出てきた『より良い世界』が何を指しているのか分からないノクトは尋ねた。
ノクトの言葉と反応にアンリは言葉を紡ぎ出す。
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