第三十三話(表裏)
傍観者の体が燃え尽きると悪魔達はアンリの体を借りている魔王の元へ集まっていく。
「我が眷属達よ。無事だったか?」
魔王は集まってくる悪魔に対し無事なのか尋ねた。
魔王が尋ねると集まった悪魔は跪く。
「イプシロンとユプシロンは灰化してしまいましたが消滅していません。他は無事です」
魔王に跪いた悪魔の内のシグマが悪魔達の状況を説明した。
「そうか。であれば先にシグマ、プサイは我が根城にもどりイプシロンとユプシロンを復活させるのだ」
「「御意のままに」」
魔王の言葉にその場にいたシグマとプサイは恭しく返事をした。
返事をするとシグマとプサイは外套から黒い炎が覆い出して包まれる。全身が黒い炎に包まれた直後炎はたちまち弱くなっていきシグマとプサイの姿諸共消えた。
「さて今度はお前だシャルロット」
魔王はシャルの元へ歩き出すと握っている聖剣を床に倒れているシャルの背中に向けた。
「今から治癒をする。少し痛むが我慢するんだ」
「分かったわ」
魔王の言葉に了承するとシャルは床に倒れたまま大人しくする。
魔王は聖剣をシャルの背中に向けると聖剣の切っ先から淡い光がシャルの切り傷を負っている背中に降り注ぐ。
切っ先から降り注ぐ光がシャルの着られた背中に降り注ぐと時間が巻き戻されたかのように背中の傷口が塞がっていく。
「治癒は終わった。もう痛みもないだろう」
シャルの背中の切り傷が完全に塞がるとシャルは無言で立ち上がった。
「助かったわ。魔王」
立ち上がるとシャルは端的にお礼を言った。
お礼を言われた魔王は何も返事を返さずに歩み出す。
歩んでいく方向はノクト達の方だった。
「勇者達よ。ここにいる敵は我が倒した。これでひとまずは安心して良いぞ」
勇者達に話しかけた魔王に対してノクトを含めた勇者達は警戒心を総動員した。
そして先に動いたのはシルフィーだった。
シルフィーは聖剣術の盾で魔王n周囲を囲った。
「敵を倒した事には感謝します。ですが、魔王であるああなたと私達勇者は敵同士である事を忘れていませんか?」
聖剣術の盾に囲われた魔王にシルフィーは警戒心剥き出しで話す。
「そうだな。勇者の目的は魔王である我を葬る事、そういう風に聖典に書かれている。だから我を討つのだろう?」
「その通りです」
「だが、その聖典に間違った記述がそもそも間違いだとは考えた事はないか?」
魔王の言葉にシルフィーは肯定すると、魔王は根本的な事を突いてきた。
「我々も聖典の原本を探している。そのために各国の異なる聖典を収集している。ノクトも独自に聖典を集めているはずだ」
魔王は蹲っていたノクトに視線を変えると、ノクトは体を起こした。
ノクトの腹部に刻まれた切り傷はいつの間にか大方塞がっていた。
「そうだがそれがどうした?」
魔王の言葉にノクトはそっけなく返事を返すと魔王を鋭い眼光で見た。
「我々が集めた聖典の情報を勇者達に提供する。その代わり勇者達と休戦を要求したい」
魔王の提案にノクトは目を大きく見開いた。
他の勇者三人も魔王の言葉に驚きを隠せなかった。
「我々はこの世界をより良いものに変える。そのために勇者達の力も借りたい」
魔王は真剣な口調でノクトの後ろにいる勇者三人を見た。
「今まで敵だった魔王の言葉を信じられると思ってるのか?」
魔王の言葉にファルコは口を挟んだ。
「そうだな。ここでこの世界の真実を言ってもお前達勇者が信用するとは思えない。だったらここでもう一つ提案がある」
ファルコの言葉に魔王は納得しながら次の提案を口にする。
「聖典の原本の内容を確認してもし我の存在が世界の悪だという記述があれば我を葬っても良い。ただし原本の記述が我の言った事と同じなら我の提案を呑む、というのはどうだ?」
魔王の言った事に驚く勇者達は目を丸くした。
「ここで我々を使って殺し合いをさせていた敵がいた事は勇者達にも理解できただろう?それでも我の言葉を信用しない程勇者達も馬鹿ではないだろう?」
魔王の言葉に勇者達は苦い顔を浮かべた。
魔王の言う通り、今回の闘いで自分達を陰で操っていた者がいる事を理解した。
それは理解できたけれど今まで敵と認識していた魔王の言葉を完全に信用できるほど人ができていない。
「それと、ノクト。お前と二人きりで話がしたい。良いか?」
魔王はノクトを見て二人きりで藩士がしたい事を伝えた。
「……分かった」
ノクトは少し間を空けて了承の返事を返した。
お疲れ様です。
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これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。