第三十話(表裏)
白装束の人物はシャルとの間に聖剣術の盾が顕現した後、後退すると白装束の人物は《時間停止》を使い姿を消した。
姿を消した白装束の人物は瞬く間にノクトの背後に回り込んで握っている双剣で斬りかかっていた。
ノクトは背後に現れた白装束の人物の方へ振り返ってすぐ聖剣を振りかざした。
ノクトの聖剣が白装束の人物に触れる前に白装束の人物の双剣が先にノクトの体を切り裂こうとする。
寸前、光の槍が白装束の人物に向けて飛んでいく。
ノクトを斬るよりも速く白装束の人物へ光の槍が届くと、白装束の人物は再び一瞬にしてノクトの前から姿を消して光の槍は空を切った。
ノクトは飛んできた光の槍の方を見ると、そこには聖剣を構えるファルコの姿があった、
「何をやっている?魔王の子孫」
「それはこっちの台詞だ。なぜ俺を助けた?」
ノクトとファルコは互いに鋭い視線を向けてノクトを助けるような行動をとったファルコに尋ねた。
「勘違いするな。俺は貴様を助けたわけじゃない。この状況で戦力を削がれるのを避けただけだ」
「そうか。それならお前なんかに礼を言う必要がなくなって助かった」
鋭い視線化ぶつかっているとすぐに移動していた白装束の人物に視線を変えた。
「なるほど。ノクトやシャルロットだけでなく、勇者全員が加勢するとは。だがそれでやっと互角。その程度では私に勝てないぞ」
「それはどうですかね?」
白装束の人物が周囲にいる勇者達を一瞥すると光の剣が白装束の人物へ飛んでくる。
白装束の人物はまた姿を消すと、白装束の人物がいた場所に光の剣が幾重にも突き刺さっていた。
光の剣を飛ばしたのは白装束の周囲にいた悪魔達だった。
「我々の存在を忘れてもらっては困ります」
光の剣を投擲した悪魔達は光の剣が突き刺さっている傍に立つ白装束の人物の方を見ていた。
「そうか。これで本当に退屈せずに戦う事ができる。感謝するぞ。私の駒達よ」
白装束の人物は愉悦に満ちた表情を浮かべて周囲の勇者達と悪魔達を見回した。
「だが、全員がかかってきてもやっと私に掠り傷を与えるのが精一杯だったお前達に勝機があると思っているのか?」
愉悦に満ちた表情から一変して冷静な表情に変わり傷一つ付けるのがやっとだった勇者達と悪魔達に尋ねた。
「それはこの状況を脱してから言うんだな?」
白装束の人物の背後から声が聞こえた。それと同時に白装束の人物の腹部から剣が貫いていた。
貫かれた県には血が滴り、白装束が赤黒く染まっていく。
「グハッ⁉」
白装束の人物は背後から腹部を貫いた剣を一瞥すして背後を見ると、そこにはノクトが白装束の人物の背後から聖剣を刺突していた。
「……いつの間に」
「あんたがシャルに攻撃を仕掛けた時にシャルは幻術をかけていた。幻の俺をつくり本物の俺を視えなくする幻術だ」
ノクトは腹部を貫通した聖剣を引き抜くと血を払った。
すると白装束の人物の服は赤黒く染まり床に倒れ込んだ。