第二十九話(表裏)
シャルの姿が霧散していくと純白の空間までも霞のように散っていくと、先程まで純白だった空間は転移する前の塔の中に変わっていた。
「いつの間に幻術をかけた?」
白装束の人物は霞が散っていく視界に映る遠く離れたノクトとシャルを見た。
「あなたが雷撃で私を攻撃した時よ。それからあなたは私の作った幻と戦っていた」
「その間に俺が転移魔術で全員を塔の中に戻した」
シャルとノクトは白装束の人物と目を合わせると手元に握っている槍と聖剣を構え直した。
白装束の人物は手元に魔法陣を展開すると手元の魔法陣から二本の剣を顕現した。
顕現した二本の剣を握り構えると白装束の人物は嫌悪切っ先をノクト達に向けた。
「さすがはシャルロットとノクトだ。まだ心のどこかにお前達を舐めていたようだ。だがそれもここまでだ」
そう言うと白装束の人物はノクト達を一瞥した。
すると白装束の人物は視界から消えた。
ノクトはすぐに背後に振り返り聖剣を正眼に構えた。
背後を振り返るとそこには既に双剣を振りかざした白装束の人物がいた。
ノクトの聖剣が白装束の人物の双剣に触れる寸前、再び白装束の人物の姿が消えた。
「シャル! 後ろだ!」
白装束の人物がが姿を消すとノクトはすぐにシャルの方へ視線を変えた。
ノクトが声を上げた時には既にシャルの背後には白装束の人物が双剣を振りかざしていた。
シャルが背後に振り返る前に白装束の人物の双剣が斬りかかる寸前、白装束の人物の剣戟を防ぐ盾が展開されていた。
「⁉」
白装束の人物だけでなくシャルも驚いた。
なぜなら白装束の人物の毛劇を防いだ盾を展開したのはこの場にいる勇者のシルフィーが聖剣術の盾を展開したのだから。
白装束の人物はすぐに後退して距離を取るとシャルはシルフィーの方を見た。
「何で私を守ったの?」
シャルは頭で考えるよりも速く口がシルフィーに疑問を投げかけていた。
「今はあの者を倒すのが最優先です。それまではあなたがいなくなっては困ります」
シャルを守ったシルフィーはあくまで倒すべき白装束の人物の討伐を最優先することを口にするとシャルは内心驚きを隠せない。
今まで敵同士だったシャルを守る行動を取ったシルフィーの心情がシャルには理解できなかった。
そして自分なら敵であった勇者を助けるような行動をとる思考が分からなかった。
「私を守ったからって感謝はしないから」
「それで結構です」
シャルの言葉にシルフィーは苦笑しながら聖剣を構えた。
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