第二十五話(表裏)
鈍痛が奔る中、ノクトは白装束の奇妙な動きの速さに頭を回した。
白装束の人物の所作を事細かに見ても転移魔術の類は一切使っていない。それにも関わらず一瞬にして背後に移動したりこちら側の攻撃を一瞬で移動して躱している。
何かカラクリがあるのは分かっているが、それが何なのかが分からない以上ノクト達に勝ち目はない。
ノクトは白装束の人物の体術攻撃を受け身を取る直前に喰らい続けていた。
しかし、何度も攻撃を受けるたびにノクトは徐々に受け身を取れるようになり白装束の人物の攻撃の力を逃がせるようになった。
「もう私の攻撃に対応できるようになったか。だが防戦一方の状況でどう反撃する?」
白装束の人物の言葉通り、防戦一方のノクトは反撃する余裕がない。
「そんな余裕見せていいのか?」
傍から見ても白装束の人物の攻撃に防戦一方のノクトは体中に重い蹴りを喰らいながら立っているのもやっとに見える。
「強がりはよせ。この短時間で受け身を取れるようになったのは称賛に値するが反撃できないお前が言える事なのか?」
白装束の人物は立っているのもやっとなノクトの発言に若干苛立ちを感じる声音で言葉を返した。
白装束の人物が再び姿を消すと瞬く間にノクトの背後に姿を現し蹴りえお喰らわす。
白装束の人物の蹴りがノクトの背中にぶつかる寸前、ノクトは背後へ聖剣を振りかぶっていた。
「⁉」
ノクトの背中に蹴りが命中すると、ノクトは蹴り飛ばされて再び地面に転がった。
ノクトはすぐに立ち上がり背後を振り返った。
振り返ると白装束の人物の頬にすっと赤い水滴が滴り落ちていた。
白装束の人物は頬に触れると指先には血の跡が付着していた。
「……言葉だけじゃないようだな」
血が付着した指先から視線をノクトに変えると白装束の人物は感心したような表情を浮かべた。
「あんたが今まで使ってた力は《時間を止める力》だろ?」
「ほう。この短時間でよく私の力を見抜いたな」
白装束の人物の頬に聖剣で傷を与えたノクトは蹴りを喰らった後立ち上がりながら白装束の人物の奇妙な移動速度の正体を見破った。
「だが、それが分かった所で私がどこから現れるか分かるとは思えない。後学のためにどうやって移動先を見抜いたのか教えてもらえないか?」
「敵にそんな事を教える斬りはない」
白装束の人物が尋ねるとノクトは率直に白装束の質問の返答を拒否した。
「まあ、そうだろうな。だが傷一つ付けた程度で私を倒せると思うなよ?」
白装束の人物は今までとは比べ物にならない程周囲の空気をひりつかせる殺気を放ち出した。
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