第二十六話
魔王の言葉が途切れるとノクトは体に元の感覚が戻った。
勇者全員が魔王の言葉に呆然としていると、ファルコは口を開く。
「どうしますか?魔王の言葉を信じて新たな敵の元へ向かうべきではないと僕は思うのですが」
ファルコのいう事は正論である事はこの場にいる勇者全員理解している。
わざわざ敵同士で戦っている場所に向かうのはあまりに危険すぎる。
「いや、俺は話に乗っかってみるのもありだと思う」
「なぜでしょうか?勇者ラザフォード?」
ファルコの提案の逆の事を言ったラザフォードにファルコは一瞬眉をひそめて尋ねた。
「敵同士が戦って双方が弱っているところを俺達が叩き潰す。漁夫の利を狙う事ができる」
ファルコの質問にラザフォードがその意図を述べるとシルフィーは口を開く。
「私も勇者ラザフォードの意見に賛成です。新たな敵が何を考えているのか分かりませんが、悪魔達が新たな敵と戦って双方が弱っていれば倒す事は容易になります」
シルフィーがラザフォードの意見に賛同すると、ファルコは鋭い視線をノクトに向けた。
「貴様はどちらの意見に賛同する?」
鋭い視線を向けたファルコはノクトに隠しきれない苛立ちを声音に零して意見を聞く。
その様子にノクトも眉間にしわを寄せた。
「お前と意見が合うのは癪だが現状であれば魔王の言葉に耳を貸すべきのは危険すぎる。どちらにしろ罠がある可能性がある以上いう通りにするべきではない」
ファルコと意見が合うのがよほど気に入らなかったのだろう。ノクトは渋い顔をしながらファルコの意見に賛同した。
「意見が割れましたね」
「そうだな。けど忘れてないだろう?俺達にはこれがある」
シルフィーが意見が真っ二つに割れて小さく息を吐くとラザフォードは《写し鏡》を指差した。
「これがあれば俺達は互いの紋章を複写、転移できる。それなら十分罠に対抗できる戦力を個別に分け与えられる」
ラザフォードの言葉にファルコは渋面する。
「こいつで危険なく勇者の紋章を転写できることは俺で実証済みだ」
そう言うとラザフォードは右目に勇者の紋章を浮かべた。
もとはノクトの右目の紋章を浮かべたラザフォードにシルフィーとファルコは驚きの表情を見せた。
「これで一人ひとり、勇者の紋章を共有すれば戦力は格段に上がる。それなら十分罠に対抗できる戦力になるだろ?勇者ファルコ?」
ラザフォードの問いにファルコは純綿糸た表情をそのままに息を吐いた。
「……たしかに、この鏡で紋章を共有すれば一人ひとりの戦力は格段に上がります。そうなれば敵の罠に対抗できる可能性は格段に上がります。けれどそれと魔王の言葉に耳を貸すのとは話が別です」
ファルコは断固として魔王の提案を否定した。
「俺はその方法なら敵の根城に向かうなら賛同します」
ラザフォードの提案に最初否定的だったノクトは続いて述べた案を聞いて意見変えた。
その様子にファルコは苦い表情を浮かべた。
「これで三対一。多数決であれば俺達の意見に乗ってもらう事になるが、どうだ、勇者ファルコ?」
「……多数決であれば仕方ありません」
ファルコは苦い表情のままラザフォードの提案を了承した。
「これで決まりだ」
こうして勇者一行は敵の懐へ向かうべく互いの勇者の紋章を共有した。
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