第十九話
「行動で示せってどういうことだよ?」
ノクトはレイノスの言った言葉に問いかけた。
「数日後、お前は釈放される。釈放されて王宮を出た後弟子入りしたいなら俺のところに来い。そこでお前の意志を見せてもらう」
レイノスは依然と表情一つ変えずノクトに話す。
「もちろん弟子入りする気がないなら釈放された後、そのまま王都を去ってもいい」
レイノスはあくまでノクト自身が弟子入りの意志を見せない限り弟子に取らない気だ。
「どうする?」
レイノスはノクトに問いかけた。
ノクトはレイノスの問いかけに少しの間逡巡する。そして絞り出すように答えを出す。
「俺はジジイを超える事が目標だ。そのためにあんたの弟子になって強くなる事が一番の近道だ。だから俺は独房を出た後あんたに俺の実力を見せる」
ノクトの答えを聞いたレイノスは地下牢の出口を向いた。
「決まりだ。釈放された後、王宮から北西に位置する闘技場に来い。そこでお前の決意を見せてもらう」
レイノスは釈放後に集合する場所をノクトに伝えるとレイノスは地下牢から出た。
レイノスが地下牢を出るとノクトは手にいているエドワードの手紙を握りしめた。
三日後——
王宮の地下牢から釈放されたノクト。
ノクトは王宮の外に出ると改めて王宮の外観を見た。白く堅牢な城壁は対魔術攻撃に備えた魔術を通さない特別な鉱石が埋め込まれている。
王宮の建物は荘厳かつ伝統的な造りで王都の建造物の中で一番巨大で象徴的な建造物と言われるだけある。
ノクトはレイノスと約束した闘技場へ向かった。
闘技場に向かうため王都の街の大通りを進むと、王都郊外では考えられない程街を歩く人々の数が違った。王都郊外の街とは比べ物にならない程人通りが多く店舗の種類と数も王都の足下に及ばない。
ノクトは人通りを避けながら進むも人通りに慣れていないためどうしてもすれ違う人々にどうしてもぶつかってしまいそうになった。
ノクトは人通りの多い大通りを抜けてようやく闘技場へ続く一本道に着いた。闘技場の周りの風景は先程の大通りとは違い人が閑散としていて周りには建物一つ建っていなかった。その中央にある闘技場は周りの風景と相反して大理石でできた荘厳な彫刻が施された建造物が聳え立つ。
ノクトは闘技場へ続く一本道を進む。
闘技場に近づいていくと闘技場前にある石像の前に見覚えのある人物がこちらを見ていた。
紺色の外套、紺色の髪、紺色の瞳の男性、レイノスがいた。
「約束通り来たようだな」
レイノスはノクトに話しかけた。
「ジジイを超えるためだ。だから絶対あんたの弟子になる」
ノクトはレイノスに弟子入りの意志を告げる。
「だけど、どうして闘技場なんかを集合場所にしたんだ?」
「闘技場でする事は一つだ。ここで俺と決闘するんだ」
「なっ!」
レイノスは唐突にノクトとの決闘を告げる。
「確かにお前は魔王の末裔とはいえ今のお前が俺に勝てるとは思わない。だからこの決闘で俺に傷一つ与えられれば弟子入りを認める」
レイノスは王宮の現聖騎士だ。ノクトが魔王の血族の力を解放できたとはいえ解放したばかりのノクトにレイノスが敵う相手ではない。
それを分かってレイノスはノクトと決闘するように言った。
レイノスは明らかにノクトを試す気でいる。
「分かった。あんたに傷一つ与えられれば弟子入りできるんだな。簡単だ」
ノクトは意気揚々とレイノスに言う。
「ここに来た目的は話した。さっさと中に入って準備をしろ」
ノクトとレイノスは闘技場の中へ入っていった。
闘技場の中は外観と違い簡素だった、必要最低限の机やオブジェがあるだけで他の物がなかった。
「俺との決闘では魔術の他にこれを使え」
レイノスは腰に携えていた鞘に収まっている剣を一本ノクトに渡した。
「この剣は?」
「俺が所持している聖剣の一つだ。この決闘場では古くから騎士同士が自身の力を他者に見せる、騎士にとって決闘の伝統がある。ここでお前はその聖剣と魔術で俺と戦うんだ」
レイノスは聖剣をノクトに聖剣を渡した後決闘場の歴史について語る。
「聖剣はともかく、何でそんな事を俺に教えるんだ」
ノクトはレイノスに率直な質問をする。
「この伝統の起源になったのは初代聖騎士が勇者を弟子入りするために試験したという逸話から来ている。今の俺とお前と似た状況だ」
「あんたも意外とロマンチストなんだな」
ノクトはレイノスの言った答えに皮肉で返した。そんなノクトもより前のめりになっていてまんざらでもない様子だった。
「では闘技場の中央へ行くぞ」
「おう」
ノクトとレイノスは闘技場の中央に繋がる一本道を進んだ。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
今回二話連続投稿します。
良ければ次話も読んでください。