第二十話(表裏)
魔王の言葉に勇者一行は呆然となった。
魔王が敵として認識されている勇者に対して助けを乞うている。
その事実をここにいる勇者達は想像もしなかった。
「何を企んでいる?」
ファルコは懇願する魔王に対して一切警戒心を解くことなく、魔王の言葉を疑った。
『我はなにも企んではいない。そうでなければ《写し鏡》の秘密を勇者達に教えはしない』
警戒心を剥き出すファルコに魔王はなだめるような口調で言い返した。
『それに、今我はノクトの体を借りて勇者と会話している。この意味が分かるか?』
ノクトの口から告げられる魔王の言葉に一同は一瞬言葉の意味を探る。そして気付く。
このままノクトの体を狩りで勇者である三人と戦う事もできる。そして一人でも勇者の誰かが戦いで死んでしまえばその時点で勇者側に勝ち目はない。
『闇雲に手を出さない辺り、我の言葉の意味を理解しているようだな?』
魔王の言う言葉の真意を理解しているシルフィー達勇者は腰に携えている聖剣の柄を握っているだけ抜剣は一切しなかった。
「話だけ。話だけ聞いてそれが疑わしいものでなければあなたの頼みを聞きましょう」
シルフィーは魔王の言葉に話だけでも聞く姿勢を見せると魔王はふと笑いを零す。
『やはり国王である勇者シルフィーは聡明だ。我の意図をすぐにくみ取るとはさすがだ』
「あなたに褒められるとは思いませんでした。魔王」
『我も称賛に値する者には称賛をする。勘違いはしないでほしい』
シルフィーと魔王は互いに言葉を交わすと勇者達の視界に映るノクトがわずかに震えた。
「……勝手に、……俺の体で……話をするんじゃ……ねぇ……!」
半ば体の支配権を奪われていたノクトは詰まりながら魔王に抗議した。
『ほう。我から支配権を奪い返すとは。なかなか強くなったのだな。ノクト?』
「うるせぇ……。お前の好き勝手に……させはしない……」
『成長した祝いだ。もう一つ伝えておくとしよう。先程我らを争うように仕向けた者の居場所を突き止めた。我の眷属はすでにそこへ向かっている』
魔王の話を聞いた勇者達は一転して驚きの表情を見せる。
『そして我の眷属の一体に《写し鏡》を持たせている。お前達が持っている《写し鏡》と共鳴させればすぐに敵のねじをへ向かう事ができる』
魔王は伝える事を伝えると、ノクトの体は急激に軽くなっていった。
『我からの頼みはこれで終わりだ。良い返事を待っている』
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