第十話(裏)
ヒストリアからかなり離れた小国の荒廃した大地に不自然に建てられた白い壁の塔の前には黒の外套を羽織った者達がいた。
「ここが魔王様の仰っていた敵のアジトですか」
黒の外套を羽織っている悪魔の一体——ユプシロンは白の棟を見上げながら呟いた。
「気を引き締めろ。俺達はこれから敵のアジトに乗り込むんだからな」
ユプシロンの傍にいたシータは白い塔を見上げていたユプシロンに注意力が足りないと忠告した。
「シータの言う通りです。私達の役目は敵のアジトの詳細な情報を魔王様に報告する事です。呑気に塔を見上げる事ではありません」
ユプシロンの少し離れた所から声をかけたゼータは白の棟へ歩き出した。
現在、魔王のために敵のアジトの傍まで出撃した悪魔達は十体。
その十体は魔王を自身の戯れとしての駒として動かしていたと宣っている敵の弱点とアジトの情報を魔王に伝えるためだけに特攻した。
「これから敵のテリトリーに踏み込むのです。十分警戒しましょう」
白い塔に歩んでいくゼータは塔の白い壁の傍に到着すると白い壁に手をかざした。するとかざした手から魔法陣が展開した。
魔法陣が展開するとゼータがかざした手の先にある壁が急に亀裂が入り破片を散らしながら壁に穴が開いた。
「では敵にテリトリーへ踏み込むとしましょう」
「そうですね」
白い壁に穴を開けたゼータが塔の中へ踏み込むと他の悪魔達も塔の中へ入っていく。
悪魔達が塔の中へ突撃すると悪魔達の視界に入ったのは天井が吹き抜けの大理石でできた高い壁と螺旋階段のみが存在する空間だった。
螺旋階段が楯突けられている壁には幾重にも取り付けられている鉄扉が目を引いた。
「どうやらこの空間は迷宮と同じ構造でできているようですね」
当の中に突撃したイータは塔の中の壁に取り付けられている鉄扉を見てすぐにここが迷宮と同じである事を見極めた。
『その通りだ。魔王の眷属達よ』
イータが見極めた迷宮に突如声が響き渡った。
するとゼータが開けた穴が時間を巻き戻したかのように砕けて穴の開いた壁が修復して穴が塞がっていった。
塞がった穴はまるで何事もなかったかのように元通りになっていた。
『悪いが私は自分のテリトリーを土足で踏み入った鼠は叩き潰す性分なのだ。お前達はここで叩き潰す』
塔の中から響く声は侵入した悪魔達にどこか不機嫌な声音で話しかけた。
「それは物騒ですね?ですが私達はあくまで鉄砲玉。魔王様に個々の情報を伝えるのが目的であるのであって私達があなたを殺せるとは思ってません」
声の主にローはいびつな顔の造りを更にゆがめて返答した。
『なら、精々私を見つけ出して魔王に私の居場所を伝えてみろ。それができればの話だが』
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