第八話(裏)
シャルが悪魔の根城の一室に入るとそこにはベッドに寝ているアンリの姿があった。
シャルは手に持っている《写し鏡》を手に取ってアンリの左手に近付けた。
左手に近付けた《写し鏡》の鏡面から光の束が奔流するとアンリの左手に収束しだす。
収束していく光の束が全てアンリの左手に収束するとアンリの左手には複雑な文様が刻まれた。
アンリの左手に文様が刻まれるとシャルは次にアンリの閉じている右目近くに《写し鏡》を移動させた。
アンリの右目近くに《写し鏡》を移動させると《写し鏡》の鏡面から再び光の束が奔流した。
奔流する光の束は瞼の上から右目に収束していく。収束していく光の束が鏡面から全て出尽くすとアンリの右目の瞳に左手とは違う文様が刻まれた。
『これで全部そろったな。シャルロット』
頭の中に響く声にシャルは返事をする。
「何の用?魔王」
シャルは声の主——魔王におざなりな返事を返すと魔王は続けて言葉を発する。
『これで我の完全復活が可能となった。シャルロットには感謝している』
「私は私のために動いた。だから魔王に感謝される義理はないわ」
シャルに感謝を伝える魔王に対してシャルは怪訝そうな表情を浮かべて言葉を返した。
「それにこれが最善策なのは理解してる。けどまだ私は納得しきってない」
返事を返したシャルは訝しい表情を浮かべ静かな怒りを瞳の奥に宿っていた。
その様子に頭の中に語り掛けている魔王は少し間を空けて次の言葉を発する。
『シャルロットの気持ちも分かる。だがシャルロットも理解しているなら我の復活に必要なアンリエットの想いも聞いたはずだ』
魔王の言葉にシャルは怪訝そうな表情から苦い表情に変わった。
「分かってる。アンリの気持ちも理解してる。けど——」
『大丈夫だよ。シャル』
魔王に言い返そうとしたシャルを制止する声が耳からではなく頭の中に聞こえた。
この声は魔王のものでなかった。
シャルにとって昔から聞いた事のある声だった。
シャルは頭の中に声が聞こえると先程まで見ていた寝たままのアンリを見た。
「アンリまでそんなこと言うの?」
頭の中に聞こえた声の主——アンリは瞳を閉じて口を閉じたままの状態でシャルを宥めようとするとシャルは仕方なさそうに返事を返した。
『私も魔王の考えに賛同してるの。魔王の叶えたい世界は私もそうなってほしいと思ってる。そのために私が必要ならいくらでも力を貸すわ』
シャルの頭に聞こえるアンリの声は魔王の思想に賛同していた。
「わかったわ。アンリがそう言うならこれ以上は言わないわ」
アンリの言葉にシャルは渋々喉元まで出てきた言葉を呑み込んだ。
『ありがとうシャル。私を心配してくれて』
「当たり前でしょ。姉妹なんだから」
アンリは心配しているシャルに感謝を伝えるとシャルはどこか照れくさそうに言葉にしていた。
お疲れ様です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。