第六話(裏)
「一体何が目的なの?」
悪魔の根城に戻ってきたシャル達は突如何者かの声が聞こえてきて困惑していた。
声の主は見えないがはっきりと耳に届く声が上機嫌な様子で話しかけてきている。
『そうだな。ただの暇つぶしであり世界の行く末の傍観、と言ったとろろか』
シャルの質問に上機嫌に答える声の主が「暇つぶし」が目的と言った直後シャルは眉をひそめた。
「そんなあなたがなぜ私達に話しかけてきたの?」
シャルは至極当然な質問をした。
『ひとまず最終段階の到達への賛辞を贈ろうとしただけだ』
「賛辞?」
『そうだ。あなた達悪魔側は勇者の紋章を全て複写した。これで魔王の復活まであと一歩と言ったところ。それに賛辞を贈るのは間違っているのか?』
声の主が饒舌に話しているとそれに比例してシャルの三県にしわが寄っていく。
「勇者の紋章を集めている事は貴女には関係ないはずよ。それなのになぜそこまで機嫌を良くしてるの?」
『本当に関係ないと思っているのか? シャルロット。いやシャリスティア。セイレーンと言った方だ理解できるか?』
声の主の言葉を聞いたシャルは顔をしかめて声の主の意図に気付いた。
「まさか⁉《写し鏡》の一件はあなたが仕掛けたの⁉」
シャルは《写し鏡》を奪取するための一件で起きた奇妙な出来事を思い出した。
『ご明察。あなたに《写し鏡》を手に入れさせるためにミラー・ガブリエルを唆し、神聖術学園に入学させたのも私達だ』
シャルが意図に気付くと声の主はより上機嫌な声音で《写し鏡》の一件を話し出す。
『本来ならミラーと《写し鏡》をかけた殺し合いを想定していたがあなたがミラーを生かしたまま《写し鏡》を奪取するのは予想外だった。それゆえに楽しませてもらったよ』
それを聞いているシャルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「……なぜそんな手の込んだ謀略をするの?」
苦い顔をしているシャルは縛り出したような声で声の主に尋ねた。
『先ほども言ったが私は暇つぶしがしたいんだ。それも特質面白い暇つぶしをね。だからこの世界を巻き込むほどの騒乱を待ち望んでいたのだよ』
シャルの質問に声の主は饒舌にそれでいてどこか落ち着いた様子の声音でシャルの質問に答えた。
「暇つぶしのため?そんな事でなぜ私達が奔走しなければならないの!」
シャルは今までで一番腸が煮え滾る思いで声の主に抗議した。
シャルの抗議を聞いた声の主はこう答える。
『それの何が悪い?』
声の主の返答にシャルは怒りを通り越して呆れた様子だった。
『私の盤上で踊っているあなた方が私と話しているだけでも光栄な状況なのだ。そんなあなたが抗議するのは見当違いというものだ』
声の主の言葉を聞いたシャルは席程まで頭に上っていた血がすっと引いていった。
「……もういい。もう私に話しかけないで」
シャルは静かに声の主に拒絶の意を告げた。
『そうだな。私も話す事は全て話した。だからここで引くとするよ』
声の主はその言葉を告げると声の主の声は一切聞こえなくなった。
お疲れ様です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。