第十六話(表裏)
シャルの投げ上げた光の剣が空に渦巻く黒雲に吸い込まれると、黒雲から凄まじい閃光がノクトの元へ降り注ぐ。
ノクトは赤い剣を構えて空から降り注ぐ落雷を受け止めた。
しかしノクトの赤い剣よりもシャルが誘導する落雷の方が威力が大きかった。
落雷を受け止めている赤い剣は徐々に雷の熱で赤熱し始めた。
ノクトに襲い掛かった落雷は凄まじい雷鳴を上げながらノクトを中心に爆発した。
爆発した場所から黒煙と爆風が散ってシャルのところまで吹き荒れた。
吹き荒れる爆風が収まるとシャルは黒煙が立ち込める方を見た。
「さすがにこの程度じゃやられてくれないわね。ノクト」
黒煙が散っていき視界が戻っていくとシャルの視界には一人の人影が見えた。
黒煙が散っていくとシャルの視界に映っていた人影がノクトである事が分かった。
ノクトはところどころ小さな火傷があるが、対した怪我はしていなかった。
ノクトは赤い剣を構え直してシャルを見た。
「そう思うなら別の方法で攻撃するんだったな」
ノクトは不敵に笑い構えた赤い剣の切っ先をシャルに向けた。
不敵に笑うノクトだが、内心焦っていた。
間一髪、赤い剣で防いでいた落雷に自身の最強の防御魔術で防いだ。けれど咄嗟に身を守ろうとして構えた赤い剣は落雷を受けた影響で刃の部分が舐め溶かされて剣というには心細い金属の塊になっていた。
「けどもうその剣は使い物にならないわね。これで攻撃する手段が一つ減ったわ」
「そうだな。けどこれで俺が攻撃できなくなっていないのはシャルも知ってるだろ?」
ノクトはそう言うと魔術を発動して手元に鈍色の短剣を顕現した。
ノクトは顕現した短剣をシャルの方へ投擲した。
シャルはノクトの投擲した短剣を避けた。
ノクトはシャルが短剣を躱した動作の間に再び短剣を顕現してシャルの元に投擲した。
短剣を避けたシャルは再び飛んでくる短剣を避けると光の剣を顕現した。
ノクトは投擲しては短剣を顕現して何度も投擲する。
シャルはノクトが何度も投擲する短剣を光の剣で弾いたり体捌きでよけたりする。
「そんな子供騙しで私がやられると思うの?」
「その台詞はこれを対処してから言ってくれ」
シャルがノクトの投擲した短剣を全て防ぎ切ると、ノクトは手元に握っている点検を地面に突き刺した。
短剣を地面に突き刺した瞬間、ノクトの握っている短剣とシャルの周りに落ちていた短剣の刀身から魔法陣が浮かび上がった。
浮かび上がった魔法陣は周りに落ちている短剣と結びつきシャルを囲む巨大な魔法陣を描いた。
「⁉」
描かれた巨大な魔法陣から大量の水が噴き出しシャルを呑み込んだ。
シャルは噴き出した大量の水に呑み込まれたまま身動きが取れなかった。しかも全身水の中で呼吸などできない。
「降伏するならこの水の檻から出してやる。このままだと窒息して死ぬぞ」
ノクトは鋭い眼光でシャルを見ると、シャルも葉物のように鋭い眼光をノクトに向けていた。
ノクトは水の檻の中にいるシャルに警告するとシャルは若干表情を歪めながら魔法陣を展開した。
ノクトはシャルの展開した魔法陣を見て驚愕の表情を浮かべすぐにシャルから距離を取った。
しかし、一瞬判断が遅かった。
シャルが魔法陣を展開するとシャルを囲う水の檻からブクブクと水泡がシャルの近くから生まれていく。そして次の瞬間シャルを中印に凄まじい熱気を纏う熱風が吹き荒れた。
シャルの放った熱風にノクトが顕現した水の檻は簡単に吹き飛んだ。
シャルが放った熱風に触れてしまったノクトは左腕に火傷を負ってしまった。
「……はぁ、……はぁ。……本校に ……窒息死しそうになったわ。ノクト」
水の檻から抜け出したシャルは呼吸を荒げながら声を発した。
「それでおあいこだ。こっちは感電死しそうになったんだからな」
ノクトは火傷した左腕を押さえながらシャルの言葉に返事した。
シャルが呼吸を整えようとしている状態でノクトは再び短剣を地面に突き刺した。
するとシャルが膝を付いている地面から植物の蔓が伸びていく。
伸びていく蔓は呼吸が整いきっていないシャルをからめとった。
「これで俺の勝ちだ」
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