第五話(裏)
「戻りましたか。シャルロット」
「えぇ。両脚の紋章を複写したわ」
シャルが悪魔の根城に戻るとイプシロンはシャルに声をかけた。
イプシロンに声をかけられたシャルは手元に握っている《写し鏡》をイプシロンの方に見せた。
イプシロンに見せた《写し鏡》の鏡面には複雑怪奇な文様が刻まれていた。
「これで勇者の紋章を四つ集まりましたね」
「そうね。あとは二つ、右目と左手の紋章だけよ」
イプシロンと会話しているシャルはどこか苛立ちを感じさせる表情を浮かべた。
「そうなると、残りはノクト様の紋章だけですね」
「……すまないけど、私はこれから紋章を輸送するからしばらく一人にして」
シャルが一人になりたいと告げるとイプシロンは「分かりました」とだけ言ってシャルの傍から離れた。
イプシロンが離れていくとシャルは根城の一室へ向かった。
根城の一室の扉を開けるとそこにはベッドの上に仰向けに寝ているアンリがいた。
「ただいま。アンリ」
アンリの寝ているベッドの傍に近付くとシャルは手元に持っている《写し鏡》をアンリの足元に置いた。
アンリの足元に《写し鏡》が置かれると文様が刻まれた鏡面から光の束が溢れ出した。
溢れ出した光の束はアンリの両脚に収束していく。
光の束に包むようにアンリの両脚に収束するとアンリの両脚に複雑怪奇な幾何学的な文様が刻まれ始めた。
光の束が《写し鏡》から全て出し尽くすと《写し鏡》に刻まれていた文様が綺麗に消え去っていた。
鏡面の文様が消えると同時にアンリの両脚に刻まれている文様が完成した。
シャルは光が消えた《写し鏡》を手に取った。
「ごめんね。アンリ」
《写し鏡》を手に取ったシャルは複雑そうな表情を浮かべてアンリに謝った。
謝ったシャルにアンリは眠ったままピクリとも動かなかった。
「これも私達の目的のためなの」
眠ったままのアンリにシャルは申し訳なさそうに自身の想いを吐露した。
そしてシャルはアンリの部屋から出て行った。
部屋を出たシャルは悪魔達が集まる一室に向かった。
部屋に着くとシャルの視界には悪魔達が集まっていた。
「シャルロット。紋章の転移はどうでしたか?」
部屋に入ってきたシャルにユプシロンは声をかけた。
「複写した右脚と左脚の紋章を無事アンリに転移させたわ」
「そうですか。あとはノクト様の紋章を複写するだけですね」
シャルがアンリに紋章の転移を成功させたことを告げるとユプシロンは残る二つの紋章を持つノクトについて話し出した。
「次こそはノクト様の紋章を複写しなければなりませんね」
「分かってるわ」
「今日はシャルロットも疲れたでしょう。ゆっくりお休みなさい」
「分かったわ。それじゃ、お休み」
そう言ってシャルは自分の部屋に戻っていった。
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