第九話(表裏)
「協力?」
シャルの提案にシルフィーはいぶかしげな視線を向けた。
「そうです。これから話す提案に協力してほしいのです。勇者シルフィー」
いぶかしげに見るシルフィーに目を合わせるシャルは提案を放す。
「私達は世界に平和をもたらすために日夜行動してきました。聖典という嘘偽りの教えに苦しむ人々を救い、誰もが笑顔で暮らせる世界をつくる。そのために私達と協力していただけませんか?」
「その提案でこちらは何を提供するのですか?」
シャルの言葉にシルフィーはこの提案で何を提供しなければならないのか尋ねた。
「察しが早くて助かります。私達が欲しいのはあなたです。勇者シルフィー」
「⁉」
シルフィーの質問に答えたシャルの回答にシルフィーは驚愕した。
「正確に言えばあなたの両脚に刻まれている勇者の紋章でしょうか」
「なぜ勇者の紋章を悪魔が欲しがるのですか?」
「これ以上は提案を承諾してからでないと答えられません」
「その言い回しだと何か私が拒否しかねない内容が隠されているように聞こえます」
シルフィーの指摘にシャルは何一つ顔色を変えなかった。
「あなたはヒストリアという国をより良く平和な国家にしたい。私は世界を平和にするために行動する。互いの目的が同じな私達なら分かり合えると思います」
そう言ってシャルはシルフィーの前に手を差し伸べた。
「何の真似ですか?」
シャルが前に刺し伸ばされた手にシルフィーは腰に携えている剣の柄を握り一層警戒した。
「友好の証です。今まで戦い続けた勇者と悪魔、互いに平和という同じ志を持ちつつも聖典というもののせいで決別した私達がこの日に和解した証に握手というはどうでしょう」
手を差し伸べたシャルは真剣な口調でシルフィーに話しかける。
「信用できません」
シャルの真剣な熱のこもった話に裏付けがない事にシルフィーは断固として手を前に出さなかった。
「でしたら、何をすれば信用できますか?」
シャルはシルフィーの目を見て真剣な口調で問いかける。
シャルの問いかけにシルフィーは意外な返答に黙り込んでしまう。
今まで命を賭けて戦ってきた敵から急な提案に加え何をすれば信用できるかの質問。これだけ話し合いをしようとしている悪魔側に驚きを隠せないでいた。
「……ならあなた達は私のくだらない提案一つで、平和のために死ぬことができますか?」
シルフィーは隈らせた喉から絞り出すようにシャルに質問をした。
今まで敵同士で、何度も戦ってきた。そう簡単に互いの確執は埋められない。シルフィーはそれを踏まえてシャルに質問した。
「本当に皮肉な質問をしますね。平和のために私達の命を捨てられるか尋ねるなんて」
「どう思われても構いません。私はヒストリアのため世界のためになるのであれば命も賭けます」
シルフィーの質問にシャルは皮肉気に笑った。そんな質問をしたシルフィーは真面目な表情で自信の想いを語った。
「その言葉が本当であるのを願いたいものです。ですが、自分の命と私達の命を賭けた時点で私はあなたを見損ないました」
「どう思われようとかまいません。私達の平和は私達が築いていきます」
互いに言いたいことを言い終えた直後シルフィーは剣を引き抜きシャルの元へ間合いを詰めた。
シャルも両手に双剣を顕現して間合いを詰め寄ってきたシャルに斬りかかった。
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