第八話(表裏)
「くっ!」
シルフィーは一枚の手紙を見て歯を食いしばった。
ファルコから届いた伝書にはシルフィーの伝書が届く前に悪魔の襲撃を受けたと書かれていた。そしてラザフォードと同じように勇者の紋章のある体の箇所が狙いだった。
手鏡と思われる道具で何かをした事までは分かっているのだが、それ以上の情報までは手にする事ができなかったとファルコの伝書に書かれていた。
「勇者ラザフォードに勇者ファルコ、そしてノクト。こうも勇者を狙われるとなると」
シルフィー自身も理解できているし覚悟もできている。
勇者を狙って襲撃しているとなれば勇者であるシルフィー自身も狙われるのはすぐに分かる事だ。
そう考えているとシルフィーの全身に重々しい悪寒が奔った。
シルフィーが感じる悪寒には覚えがある。
シルフィーは近くに置かれている聖剣を手にして腰に携えて背後を振り返る。
王宮の中でもシルフィーのいる王室は物理的、魔術的に厳重な警備がなされている。
その警備を掻い潜る事のできる者はシルフィーの中で知る者は限られている。
「今度は私が標的ですか?悪魔達」
背後を振り返ったシルフィーの視界には黒の外套を羽織った者達が立っていた。
「よくご存じで。勇者シルフィー」
黒装束の悪魔の中に一人、美しい金髪をしている少女——シャルがシルフィーの質問に答えた。
「それとも新国王と呼んだ方が良かったでしょうか?」
シャルの言葉にシルフィーは眉をひそめた。
「あなた方悪魔にはそのような事はどうでもいいはずです。私をからかっているつもりですか?」
「いえ、あなたと話す最後の機会ですから、少しだけ長話をしたいのです」
シルフィーの語気の強い質問にシャルは悠然と答えた。
「国王となったあなたには今までの王政はどう映りましたか?」
「何の話ですか?」
シャルの棟得な質問にシルフィーはその意図が分からず咄嗟に質問を返してしまう。
「今までの国王はノクトのような魔王の子孫であるだけで迫害していた。ノクトだけではない。自分達が恐れる血族を迫害して自身の権力を誇示し続けた今までの王政を私は反吐が出る程嫌っています」
「確かに今までの国王は自身の権力に従わない人種に対してかなりの政治的圧力をかけてました。私も行き過ぎた政策だと思います」
シルフィーはシャルの発言に否定をせず、敵であるシャルの意見に賛同した。
「やはりあなたは今までの国王とは違い聡明ですね」
「先程も言いましたが何が目的ですか?」
シャルの意図が分からないシルフィーにとって今までの会話に何の意味があるのか分からず再び質問していた。
「ここからが本題です。聡明なあなただからこそ、この話をしたくここまで来ました」
シャルは真剣な眼差しでシルフィーを見た。
「私の願いのために協力していただけませんか?」
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