第五話(表裏)
シャルの姿を捉えるラザフォードはホホの傍に到着するとすぐにホホの前に回り込んで悪魔達に聖剣を構えた。
ラザフォードが聖剣を構えると同時に悪魔二体とシャルは光の剣を顕現させた。
そして同時に動いた。
ラザフォードは聖剣術で悪魔二体に火球を放った。
悪魔二体はそれぞれ別方向に散りラザフォードが放った火球を躱す。悪魔二体が躱した火球は地面に衝突する寸前、火球が一気に爆風をまき散らした。
火球が撒き散らした爆風に巻き込まれたシャルは爆炎に呑み込まれた。
ラザフォードは最初から悪魔二体に攻撃を仕掛けるために火球を放ったわけではなく、放った火球の近くにいたシャルを爆炎で攻撃するために放っていた。
ラザフォードの想定通り爆炎に巻き込まれたシャルをよそにラザフォードはすぐ後ろにいるホホに声をかける。
「いいか。絶対にここから動くなよ。そうでないと嬢ちゃんを守りながら戦えない」
「わ、分かりました!」
ラザフォードからの忠告にホホは現状に慌てふためきながらもしっかり返事を返した。
爆炎に巻き込まれたシャルがいた場所から渦を巻くように風が吹き荒れるとそこには爆炎を風の魔術で防いだシャルが立っていた。
「さすがにこんな陽動じゃ傷一つ付けられないか」
「いえ、こっちもあと一瞬判断が遅れたら爆風で全身火傷していたでしょう」
互いに毛回心を総動員させて敵同士の相手に話しかけた。
次に動いたのは悪魔二体だった。悪魔二体は掌から光の球を顕現させてラザフォードに放った。
悪魔二体が放った光の球二つは一直線にラザフォードの元へ飛んでいく。
ラザフォードは飛んでくる光の球を聖剣を振るい斬り払うと、ラザフォードの後ろで爆発した。
悪魔の攻撃を退けたラザフォードの前にシャルが突進してくる。
すぐに間合いを詰めたシャルは光の剣をラザフォードに振るう。シャルが振るった光の剣をラザフォードは聖剣で受け止めた。
本来なら勇者の講師する聖剣の力で悪魔が顕現する光の件は粉々に砕け散る。しかしシャルが顕現した光の剣はラザフォードの聖剣に触れても粉々に砕けることなく鍔迫り合いになる。
体格の面ではラザフォードに分があるにもかかわらず、シャルはラザフォードと一歩も引かない鍔迫り合いを繰り広げていた。
鍔迫り合いの中、悪魔二体は左右からラザフォードに向かって雷撃を放った。
シャルと互角の鍔迫り合いをしているラザフォードに歯左右からの雷撃を躱せない。まして後ろにはホホがいる。もしラザフォードが飼わせてもホホが巻き添えになる。
ラザフォードは聖剣から炎を噴き出させて左右からの雷撃を遮る炎の壁を形成した。
ラザフォードの聖剣術の炎の壁は悪魔の雷撃を阻んだ。
聖剣術の炎の壁に阻まれた雷撃は軌道がすれて明後日の方向へ命中する。
ラザフォードは雷撃を阻んだ聖剣術の炎を鍔迫り合いをしているシャルの方へ方向を変えた。
シャルはラザフォードの意図をすぐに気付き、鍔迫り合いをしているラザフォードの聖剣から光の剣で受け流した。
先程まで互いに全力で鍔迫り合いをしていたためシャルが聖剣を受け流すとラザフォードは前に倒れそうになる。
受け流した聖剣から発せられる炎を紙一重で躱したシャルはすぐにラザフォードから距離を取った。
「勇者の中でも長く悪魔と戦ってきただけはあります。悪魔との戦い方を知り尽くしてますね」
「そんな俺と互角に戦えるあんたこそ人間業じゃないな」
言葉だけは互いに敬意を称しているが互いを見る双眸は敵意がむき出しで一瞬の隙も無かった。
「それにしても仲間を守りながら私達とまともに戦える勇者でもこればかりはどうしようもないでしょ?」
シャルは光の剣を地面に突き立てるとラザフォードの周りの地面が急に動き出した。
動き出した地面はみるみるうちに泥のように柔らかくなり足元を沈ませていく。
ラザフォードはすぐにホホを抱えて沈み始めた足元から距離を取ろうとした。しかしラザフォードがこの場から距離を取ろうとした寸前、悪魔二体は左右から光の剣を構えて間合いを詰めに来た。
ラザフォードは自身の緩んだ足元から離れるより早く悪魔の攻撃が届くと察するとすぐに自分達を囲む盾のように聖剣術の炎を制御した。
聖剣術の炎に悪魔達は間合いを詰めようとした足を止めて避けた。
悪魔を退けたラザフォードはシャルの策に嵌り足元が地面に沈んでしまった。
「これで動けなくなりましたね」
シャルの策に嵌ったラザフォードは苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。
シャルは一気にラザフォードの間合いに詰めてきてエア座フォードの聖剣に光の剣を叩きこんだ。
シャルの一振りでラザフォードは握っていた聖剣を放してしまった。
攻撃する手段を失ったラザフォードにシャルは手元から手鏡を出してラザフォードの左目に手鏡をかざした。
するとラザフォードの左目から光の束が奔流してシャルの握る手鏡に吸い込まれていく。
左目から光の束をしゅれさせているラザフォードは急に体がしびれて自由がなくなり指一本も動かせずにいた。
光の束の奔を吸い込んでいく手鏡には複雑怪奇な文様が刻まれると光の束は消えていき何事もなかったかのように元に戻った。
シャルは光の束の奔流が消えるとすぐにラザフォードから距離を取った。
「目的は果たしたので、私達はこれで失礼します」
「待て! 一体何が目的だ!」
ラザフォードがシャルの真意を聞こうと声を上げた瞬間シャルの足元から光の柱が立ちあがりシャルの体を呑み込んだ。シャルの同時に悪魔二体の体も足元から溢れる光の柱に呑み込まれる。
光の柱が消えると悪魔達と共にシャルの姿が消えていた。
お疲れ様です。
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