第四話(表裏)
ホホは目を覚ますと目をこすりながらテントの外を出る。
日が昇り始めて周囲の景色が白み始めていた。
「おはようございます」
「おはよう」
ホホは夜警をしていたラザフォードに挨拶をするとラザフォードは挨拶を返した。
ラザフォードが挨拶を返した後ホホはテントを出てすぐに焚火の方へ進んだ。
日が昇ったとはいえまだ肌寒い空気にホホはすぐにでも暖を取りたいのだろう。焚火の近くに着いたホホは焚火の前に掌をかざして暖を取った。
「さすがにこの季節はまだ肌寒いですね」
「そうだな。ほら茶を淹れたから、これでも飲んであったまるといい」
そう言ってラザフォードはホホに温かいお茶の入った容器をホホに渡した。
ラザフォードから容器を受け取ったホホは容器の中を見た。
容器の水面から湯気と共にお茶の香りが立ち上りホホの鼻腔をくすぐる。
ホホはお茶の熱で温められた容器を包むように握り湯気が立ち上るお茶を啜った。
ホホはお茶を啜ると寝ている間に冷え切った体の芯から温まる感覚を覚えた。
加えてお茶の香りがホホの頭の回転を呼び起こすような感覚を覚えた。
ラザフォードから渡されたお茶を全て飲み干すとホホは飲み干した容器を置いた。
「ラザフォードさんは仮眠を取って下さい。その間にあたしが朝食の準備をしますので」
「そうか。助かる。悪いが朝飯ができたら起こしでくれ」
そう言うとラザフォードはあくびをしながら自身のテントへ戻っていった。
ラザフォードがテントの中に入るとホホはすぐに朝食の準備に取り掛かる。
ホホは焚火の火を強くするために薪をくめた。少しずつ日が強くなっていくことを確認したホホは朝食の縦鼻に取り掛かった。
ホホが料理に取り掛かるとほぼ同時にラザフォードのいびきがホホの場所まで響いてきた。
ラザフォードのいびきをない者として気にせずに料理の準備をしていくホホはものの数十分で朝食の準備を仕上げた。
「ラザフォードさんを起こしに行くか」
ホホはラザフォードのテントへ向かうと、急に周囲の空気の温度が下がる感覚を覚えた。
日が昇って徐々に暖かくなっていたにもかかわらず全身に寒気が急に来るのは明らかに異常だ。
「やはりここにいましたか」
ホホは背後から聞いた事のない不気味な声音の発言が耳に届く。
ホホはすぐに恐怖からくる寒気である事を察知した。
すぐに振り返ったホホの双眸に映るのは黒の外套と異形の顔が特徴的な者だった。
「さすがに《隠密》を使われていたので探すのに手間取りましたよ」
黒の外套の者——悪魔はホホを見ながら流暢に話し出す。
「ですが今勇者の一人は睡眠中。絶好の機会です」
目の前の悪魔にホホはただ立ちつくし相対するだけで全身に恐怖で悪寒が奔っていた。
今のホホは手持無沙汰。その上ホホ自身に悪魔と相手できる戦闘スキルは皆無だ。すぐにでもラザフォードを呼んだ方がいいのは自明だ。
けれどラザフォードを呼び起こすために悪魔に背後を見せるのも明らかに握手であるのもホホは察している。
脳内であくつもこの場の改善策を考えるホホだが可能である策は全く思いつかない。
そんな事を考えているとラザフォードのテントから悪魔に向けて火球が飛んできた。
悪魔は火球を躱してホホから距離を取った。
「大丈夫か! ホホ!」
悪魔が後ろに下がったと同時に聖剣を構えているラザフォードがテントから飛び出してホホに近付く。
「何ともありません。ありがとうございます」
悪魔から距離を離してくれたラザフォードにお礼を伝えたホホは先程までの恐怖からくる悪寒が和らいだ。
「お早いお目覚めですね。勇者ラザフォード」
そう言ってラザフォードに話しかけたのは先程までホホの近くにいた悪魔とは別の悪魔だった。
「悪魔が俺になんか用か?」
ラザフォードは警戒心を剥き出して悪魔二体に向けて尋ねた。
「えぇ。今回の目的は勇者ラザフォード。あなたです」
ラザフォードから見て右側から女の声が聞こえた。
ラザフォードとホホは声が聞こえた方を見る。そこには悪魔の顔を模した仮面に黒のワンピースを着た少女がいつの間にか姿を現していた。
「しばらくぶりですね。勇者ラザフォード」
「今になってあんたから俺に会いに来るとは予想外だったぜ。悪魔側の人間」
ラザフォードの視界に映ったのはホホの村に襲撃してきた悪魔側の人間、シャルだった。
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