第十六話
食事を食べ終えたホホとラザフォードは食事の代金を払って店を出た。
「さて、じゃあ旅の続きをするか」
「そうしましょ」
二人は立ち寄った村を出て目的地であるザイロンへ向かう。
村を出てしばらくは視界に広がる平原の一本道を進むとすでに日が傾き空は茜色に染まっていた。
「野営の準備をしないとまずいな」
「そうですね。早く用意をしましょう」
そう言うとホホとラザフォードは自身が担いでいる鞄を下ろして中から野営に必要な道具を広げていった。
二人は慣れた手つきで野営に必要なテントや焚火を用意した。
そして日が完全に落ちた頃には野営の準備は全て終えていた。
「先に夜警を頼む。深くなったら交代しよう」
「分かりました」
そう言ってラザフォードはテントの中へ入り寝袋に入って眠りについた。
ラザフォードが仮眠をとるとホホは夜の寒気を退けるために焚火の前で暖を取る。
ホホが暖を取っているとラザフォードのテントから凄まじい騒音が響いてきた。
「……やっぱり直ってなかったか」
ラザフォードのテントから響きてくる騒音を聞いてホホは溜息を吐いてぼそっと呟いた。
ラザフォードはとてもいびきがうるさい。家を建てる時に響く騒音並みに耳を劈く音と例えるのが近いだろう。
ホホは未だに直っていないラザフォードのいびきの音に多少苛つきを覚えるが、途中で寝落ちしないためにはちょうどいいと割り切った。
ホホは村から出る際に実っていた数種類の木の実を枝に刺して薪の近くで焼き始めた。
ノクトに弟子入りする際に課題を解決するきっかけになったクルプルだ。
生の状態では毒があり食べられない木の実だが、一度火を通すと毒が分解されて美味しく食べられるようになる。
ホホはクルプルを丁寧に火の傍で熱を通していく。徐々にクルプルの皮目が香ばしいきつね色に変わってくるとクルプルから甘く芳しい香気が漂ってきた。
「そろそろかな」
ホホは枝に刺して焼いたクルプルを手に取っって熱い状態を一齧りした。
熱い果汁がクルプルから溢れ、口の中に広がるとホホはほふほふと口を動かし熱を逃がす。
熱が逃げるとホホの口に香ばしい甘みと柑橘系を思わせる爽やかな香りが奔流するように広がる。
ラザフォードから教わったクルプルの知る人ぞ知る調理法だ。
ホホは熱い果汁を啜り果肉をかじりながら食べ進めるといつの間にかクルプルの実を一つ食べ終えていた。
ホホはもう一つ焼いたクルプルを手に取って食べ進める。
残りは次に夜警をするラザフォードに残しておくものとして若干焚火から距離を離した。
もう一つの焼いたクルプルを食べ終えたホホは満足そうな顔をして焚火で温めていたお茶を啜った。
冷える夜の暗さに焚火の灯りでお茶を淹れた器から湯気がはっきりと見えた。
ホホが息を吐くと息が白み空高くへ上がっていく。
お茶を飲み始めてしばらくすると先程まで響いていた騒音が途端に消えた。
少しするとテントからラザフォードが出てきた。
「夜警お疲れ。交代しよう」
「はい。クルプルを焼きました。夜警の際に食べて下さい」
「おぉ。気が利くな。ありがたくいただくぜ」
ホホは焚火の近くに刺した焼いたクルプルを差してラザフォードに焼きクルプルの勧めた。
ラザフォードもホホに感謝を伝えて先程までホホが座っていた場所に着いた。
夜警を交代したホホは自身のテントに入り寝袋の中に入った。
先程の焼きクルプルやお茶の影響ですぐに眠気が襲い掛かってきてホホはすぐに眠りについた。
お疲れ様です。
本日も読んで下さり誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。