第十五話
薬屋から出たホホはすぐにラザフォードと合流した。
合流したのは村の食事処だった。
「ラザフォードさん!」
「戻ってきたか。久しぶりに店主と話せてどうだった?」
「特に他愛ない話しかしてませんでした」
「深刻な話よりそっちの方がずっといい」
戻ってきたホホにラザフォードは店主のコンとの藩士はどうだったのか聞くとホホはまんざらでもない表情で答えた。
「ラザフォードさんは食事ですか?」
「あぁ。嬢ちゃんも飯にするか?」
食事処の前にいたラザフォードに食事を摂ろうとしていたのか尋ねるとラザフォードはすぐに肯定した。そしてホホにも食事を摂るのか質問をした。
「そうですね。少しお腹もすいてますし、ここで食べましょう」
「なら決まりだ。ここで飯食おうぜ」
ホホが快諾するとラザフォードとホホは食事処の店内へ足を踏み入れた。
店内に入ったラザフォードとホホは空いているテーブル席へ進む。
テーブル席に着いたラザフォードとホホはテーブルの上に置かれたメニュー表を見た。
「メニューが変わってなくて安心したぜ」
「前にもここへ来たことがあるんですか?」
「あぁ、ノクトと初めてここへ来た時にここで飯食ったんだ」
「そうだったんですか」
ラザフォードはこの食事処で食事するのは約一年ぶり。
初めて食事をしたのはノクトと魔王の魔力が封印された魔石を防衛するための旅に出てこの村に立ち寄って以来だ。
「この店は値段が安いのに味がいいから気に入ってんだ」
「この村では一番おいしい食事処で有名ですからね」
ホホはラザフォードの話に返事を返しながらメニュー表に目を通していた。
「ラザフォードさんは頼むもの決まりましたか?」
「決まったぜ。嬢ちゃんは決まったのか?」
「はい。決まりました」
互いに注文するメニューが決まるとラザフォードは店員に声をかけて呼んだ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
店員がメニューが決まったのか質問すると、ラザフォードは三種の肉の香味焼き定食を、ホホはこの店で一番安い定食と一番安いスープを注文した。
注文を聞いた店員はすぐに店内の調理場に注文を知らせに行った。
「随分安いものを注文したな?」
「知らないんですか?この店の一番安い定食の美味しい食べ合わせを?」
ラザフォードはホホがこの店で一番安い定食と一番安いスープを注文したホホにふとした疑問を尋ねると、ホホはどこか地面気に返事を返した。
数分が経過して注文した料理がテーブルの上に運ばれた。
ラザフォードが注文した料理は見るからに大盛りで添えてあるパンはラザフォードの大きな掌程のサイズで主菜である三種の肉の香味焼きは自身の肉汁で照り輝いていた。
一方のホホの料理はカリカリに焼かれた干し肉と副菜の潰した芋のサラダ、ほのかに温かいパンの定食にとろみの付いた褐色のスープが運ばれた。
「それじゃあ、教えてくれよ。その美味しい食べ合わせを」
「良いですよ。じゃあ見ててください」
そう言うとホホはスプーンを手に取ってにカリカリに焼かれた干し肉にかかっているソースを掬い潰した芋のサラダにかけた。
「まずはこの芋のサラダにソースを少量かけて、かかったソースとサラダを一緒に食べます」
ソースがかかった部分をスプーンで取って口に運ぶ。
干し肉にかかっていた甘辛いソースが鋳物サラダの優しい甘さとほのかな塩味、舌触りの良い口当たりが合わさり単体で食べるよりも更に食が進む味に変化した。
ホホは満足そうな笑みをこぼして芋のサラダを食べた。
「それと定食について来ている硬めのパンをちぎって別に注文したスープに浸して一緒に食べます」
そう言うとホホは硬めパンを一口程のサイズに千切って褐色のスープに半分浸けて、スープがパンに染み込んだ部分を口に入れた。
肉と香味野菜の旨味が解け込んだ褐色のスープが染み込んだおけ下でパンは程よく柔らかくなり口で咀嚼するにはちょうどいい硬さまで柔らかくなる。
パンのほのかな甘みと香ばしい香気にスープの肉と香味野菜の旨味が混然一体となってそれぞれ単体で食べるよりも食事が進む。
「それにもう一つ、美味しい食べ合わせがあるんです」
美味しそうに食べるホホを見るラザフォードは次に何と何を組み合わせるのか見入っていた。
「スープが残り少なくなってきたら最後、芋のサラダにかけちゃいます。その芋のサラダと残りの干し肉をパンで挟んでそのまま食べます」
ホホは口で説明した順序で芋のサラダに残り少ないスープをかけて干し肉と共にパンで挟んだ。
パンにはさんだ干し肉と芋のサラダを一緒に食べたホホはとても充実したような表情を浮かべていた。
「確かに美味そうに食ってるけど、マナー的にそれはどうなんだ?」
ラザフォードは食事のマナーとしてホホが教えてくれた食べ方に疑問をぶつけた。
「ここは大衆料理店。マナーよりもより美味しく食べる方がいいとあたしは思います。それにこの食べ方はこの店の店主から教えてもらったんです」
「それならいいか」
充足感に満たされていたホホにラザフォードが疑問をぶつけた途端少し不満そうな表情を浮かべると食べ方について店主から教えてもらった食べ方である事を伝えた。
それを聞いたラザフォードもそれならいいかと納得した。
「ラザフォードさんが注文した定食についてるパンとスープはあたしが食べてるパンとスープと同じですよ」
ホホがラザフォードが注文した定食について来ているパンとスープが同じであると伝えるとラザフォードはホホと同じ食べ合わせ方を試した。
パンをちぎりスープに浸して食べる。
ラザフォードはスープを浸したパンを口にした瞬間、咀嚼するごとに程よく柔らかくなったパンのほのかに甘い香りにスープの旨味が絶妙に口の中で広がった。
ホホの言う通り単体で食べるよりも一緒に食べたほうが一層美味しくなったのを感じた。
「それに三種の肉にかかってるソースもそのパンとの相性はいいですよ」
ホホから教えてもらった食べ合わせをすぐに実行するラザフォード。
三種の肉にかかっているソースをパンと一緒に口に運んだラザフォードは口の中で香辛料の聞いた味の濃いソースと噛み応えのある硬めのパントの相性も絶妙だった、
「どうですか?美味しいでしょ?」
「あぁ、美味いな!店主から直接聞いただけはあるな!」
ラザフォードはホホの言った食べ合わせ方に満足しながら食べ進める。
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