第八話
換金所を後にしたノクトはアルカポスの街並みを歩くと次の目的地へ辿り着いた。
アルカポス大図書館。
大都市であるアルカポスの知識が収容されていると言われるアルカポスにある書物が揃った大図書館の前にノクトは訪れた。
訪れた理由は一つ。
自らの手で殺めたかつての師匠であるレイノスの遺言でもある聖典の情報収集だ。
幼少期にヒストリアで育ったノクトでも聖典の全貌は知らない。
まして国ごとに聖典の内容が異なるのであれば、聖典の原本に到達するのはヒストリアにいるだけでは到底不可能だ。
だからノクトはヒストリアを出てヒストリアとは異なる聖典の内容を知る必要があった。
ノクトは大図書館の入口の扉に手をかけて扉を開き中へ入った。
大図書館の中に入るとノクトの視界に広がるのは広い空間のいたるところにある巨大な本棚だった。
図書館であるのだから本棚がいたるところにあるのは普通の事だ。しかしノクトの知っている図書館であるヒストリア王立図書館でもここまで本が治められている巨大な本棚が壁際や建物の中央に何列も陳列している光景は初めてだった。
本の数がけた違いに多い大図書館でも共通するのは紙の匂いだった。
ノクトは広い空間に高密度で並ぶ一見すると圧迫感のある光景であるにも関わらずどこか懐かしい感覚を覚えた。
大図書館の中を歩くノクトは真っ先に大図書館の受付へ進んだ。
大図書館の中を進むノクトは受付へ辿り着くと、そこには眼鏡をかけたいかにも大図書館の司書らしき女性が座っていた。
「いかがなさいましたか>」
受付の女性はノクトの顔を見ると穏やかな声で尋ねた。
「聖典が置かれている本棚はどこですか?」
用件を尋ねた受付の女性にノクトは聖典が保管されている本棚の場所を質問した。
すると受付の女性は大図書館の見取り図を受け付けの机の上に置いた。
「聖典の保管されている本棚はこちらの本棚です。ここからですとすぐ左に進んで三番目の本棚の下から五段目に保管されています」
丁寧に聖典の保管場所を伝えた受付の女性にノクトはお辞儀をして感謝を伝えた。
お辞儀をしたノクトに受付の女性はお辞儀を返してくれた。
ノクトは受付の女性に感謝を伝えるとすぐに聖典の置かれている本棚へ足を運んだ。
受付から左に進んで三番目の棚まで進むとそこには歴史書・史術書専門の本棚だった。
ノクトはその本棚の下から五番目の列を探すとそこには古びた背表紙の本が一冊しまわれていた。
ノクトは古びた背表紙の本を本棚から引き出すと、手に取った本の表紙には聖典と書かれた本だった。
ノクトは内心で目的の本が見つかった事に高揚感を覚えた。
ノクトは近くの椅子まで進み座るとすぐに手に取った聖典を開いた。
ノクトが聖典の中を開くとそこには本のページ一枚一枚にびっしりと文字が記されていた。
ページを一見したノクトはそっと開いた表紙を閉じた。
そして再び聖典の中を開いた。
ノクトが開いたページには文字がびっしりと記されていた。
「・……まあ、そうだよな」
ノクトは差から様に落胆した様子去った。
ヒストリアに存在した聖典もほんの一ページ一ページにびっしりと文字が記されていた。
いくら国によって記された内容に違いがあるとはいえ記されている内容量に大差はない事はすぐに理解できた。
ノクトは聖典のページをめくり文字が記された聖典の最初のページを読み始めた。