第五話
王都。王宮内——
豪奢な造りの内観の王室の書斎の椅子にシルフィーは座っていた。
書斎の机の傍にある椅子に座っているシルフィーは今まで避けていた法律についての本を読んでいた。
「……疲れた」
シルフィーは目の疲労をほぐすために目頭を押さえてもみほぐした。
シルフィーの実父でありヒストリア王国の国王であるレイモンドが元聖騎士レイノスに討たれて半年が経過した。
レイノスが王国への忠誠を背き反旗を翻した一件で、シルフィーはヒスロリア王国の唯一の後継者として国王に祭り上げられた。
反旗を翻してレイモンドと聖母教皇のサイグリューを討ったレイノスは弟子であり勇者の紋章を持つノクトの手によって絶命した。
あまりにも短い天下を取ったレイノスを討ったノクトは国から反逆者を倒した英雄として祝われるはずだったが、当の本人はレイノスを倒した直後、姿をくらました。
王のいなくなった王国はすぐに次の王を就任させる事で騒然としていた。
レイモンドにはシルフィーの他にも子はいたがシルフィー程優秀で人徳に恵まれた子がいなかった。つまりシルフィーは消去法によって国王に選ばれた。特に今は悪魔との戦いで臨戦状態だ。勇者であるシルフィー程うってつけの人材はいなかった。
そんな裏の事情を知りながらシルフィーは国王の座に座る事を了承した。
今まで父親が見過ごしていた諸問題を解決するために、そして王族に根強く伝わる因習、聖典に記されている悪魔の血を引くとされている人達の非道な扱いを失くすための政治づくりを一からつくる。
シルフィーはその思いで国王になった。
その政治づくりを大願させるための右腕として力を借りたかったノクトは未だ行方の見当が付かない。
シルフィーの聖剣術で滞在したであろう街や村の見当は付いているが現在の居場所まで把握できていない。
ノクトが聖剣術でこちらから送っている文通に対して返事を返さないために居場所を把握できていないのだ。
ノクトも何かしらの考えあっての行動だろうが、それでも同じ勇者である立場なのだから返事を返してほしいという個人的意見もシルフィーの中にあった。
ここ半年近く国王になってからの仕事に忙殺されていた室フィーはそんな事を考える暇がやっとできるようになった。
シルフィーは時間が空けば自主的に法律の本や今までの王国の歴史の本も読むようになった。
これも生真面目なシルフィーだからこそ続けられる習慣と言える。
シルフィーが背筋を伸ばして息を吐くと窓から物音が聞こえた。
シルフィーは窓から聞こえる物音の方を向くと嘴に紙を咥えた小鳥が窓を突いていた。
小鳥が突く窓の方へ進むシルフィーは窓を開けて紙を咥えた小鳥を部屋の中へ入れた。小鳥が咥えていた紙を拝借したシルフィーは紙に書かれた文字を見た。
「ノクトから⁉」
文字を記した者の名前を見たシルフィーは小鳥を使って手紙を送ってきたノクトに驚いた。
今まで何も返事を返さなかったノクトが急に自分から手紙を送ってきた。
その事だけでシルフィーは目を大きく見開いたほどだ。
シルフィーは手に取った手紙の内容を読み進めた。
その手紙の内容にシルフィーは綺麗な眉間にしわを寄せて驚愕を覚えた。
お疲れ様です。
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これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。