第六話(表裏)
手鏡を持つシャルは悪魔達に首元へ光の剣の切っ先を向けられて身動きの取れないノクトに近付くと、シャルはノクトの剣を握っている左手の傍に止まった。
ノクトの左手の傍に近付いたシャルは手に持っている手鏡をノクトの左手に鏡面を添えた。
手鏡がノクトの左手に添えられた瞬間、ノクトは意識をしていないにも関わらず左手の紋章が勝手に浮かび上がった。
勝手に浮かんだ紋章は凄まじい閃光を放ちだした。
手鏡はノクトの左手の紋章が放つ光を吸い取るように紋章から溢れる閃光を全て吸収していく。
ノクトは今の状況に危機感を覚えると咄嗟に自分の足元に魔法陣を浮かべた。
シャルを含めて悪魔達はノクトが展開した魔法陣を見るとすぐに首元に向けた光の剣を正眼に構え直した。
ノクトが展開した魔法陣の上から巨大な氷の槍がいくつも突出した。
ノクトを囲んでいた悪魔達は一瞬遅れて氷の槍の攻撃を掠めてしまう。
シャルは悪魔よりも気付くのが早かったのか、ノクトが展開した魔法陣から突出した氷の槍を紙一重で躱した。
シャルがノクトの左手に添えていた手鏡はシャルの手元に傷一つなく回収されていた。
「シャル。一体何をするつもりだ?」
ノクトは氷の槍を躱したシャルに眉間にしわを寄せながら質問した。
「その質問を聞いて答えると思ってるの?」
ノクトの質問を一蹴したシャルは先程紋章から溢れた閃光を吸収した手鏡を一瞥した。
「さすがに短時間だと写し取れないようね。それが分かっただけでも収穫ね」
持っている手鏡を外套の懐にしまうシャルはノクトの周囲にいある悪魔達に視線を向けた。
「久しぶりに会えてよかったわ、ノクト」
シャルが言葉を発した瞬間、シャルを含めたノクトの周囲にいる悪魔達は黒の外套の黒い炎に全身を包まれていった。
黒い炎に包まれたシャルと悪魔は徐々に姿を消していった。
「さようなら」
シャルは完全に姿を消す前にノクトに別れの挨拶をした。
別れの挨拶をしたシャルは周囲にいる悪魔と共に姿を消した。
「何が目的だったんだ?」
ノクトは姿を消したシャルの今回の行動の意図が分からないままだった。
前に再会した時はホホが大事にしていた本を奪取しようとしていた。
それに悪魔達も今までノクトに対して敵意を見せなかったのに、今回はノクトに対して明らかに悪魔達から敵意が感じられた。
そしてシャルの持っていた手鏡は明らかに妖しい雰囲気が漂っていた。
ノクトは思い当たる疑問に対して何も答えを掴めないままその場に立ちつくした。
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