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第三話

 ノクトは目を開くと視界に広がるのは暗黒に染まる空間ではなく借りた宿の部屋だった。


「やっと戻れた」


 ノクトはベッドの上でうつぶせに寝転んでいた。部屋の窓を見ると外はすでに夕日が沈む時間帯だった。

 ノクトは王都を去る前、偶然にも魔王の魔力を封印していた魔石が壊れた際に魔王の魔力を吸収してしまった。


 肉体的に何も影響はしなかったが、ときどき意識だけが魔王の意識や魔王の魔力に共有してしまう事が起きていた。


 初めて魔王と意識を共有してから半年、今日のを含めて十一回、魔王と意識を共有した。

 ノクトにとって敵である魔王と意識を共有する事自体虫唾が奔る出来事だが、それに加えて意識の中では体が自由に動けず会話だけしかできない事に鬱憤が溜まっていた。


 それに比べてノクトと意識を級有している魔王はどこか言葉に喜びが含まれているような声音でノクトと会話していた。それを含めてノクトは意識を共有した時はかなり不機嫌になっていた。


「くそっ。早く魔王との意識の共有を遮断する方法を身に付けないと」


 苦い顔をするノクトは一刻も早く魔王と意識の共有を遮断する方法を見つけたくて仕方がないようだ。

 魔王自身も自分の意志でノクトと意識を共有しているわけではないと伝えていた。それが本当の事なのかは定かではない。しかしどちらにしてもノクト自身んが魔王との意識を拒絶する方法を身に付けなければいつ魔王と意識を共有するか分からない。


 それだけは勘弁だ。


 ノクトは心の中で溜息を吐くと借りた宿のテーブルに先日手にした剣を置いた。

 鞘のない赤い剣は大きな布に包まれて刃に触れて切らないようにした。それとは別に剣に巻き付いていた布は封印の術式が施されており、ノクトの隙を狙って暴走しないように力を縛っていた。


 聖剣と称するにはあまりに無骨で粗削りな力が宿っている赤い剣をノクトは柄を握った。

 封印の布に巻き付かれて本来の力を縛られた赤い剣はノクトが柄を握った直後、布の間から強烈な赤い光が漏れだした。

 ノクトが柄を握っている手から赤い火花が散っていた。まるでノクトが柄を握る事を拒絶するかのように。


「流石に一朝一夕でこいつを手懐けることはできないか」


 火花が散る柄を放したノクトは柄を握っていた手に視線を変えた。

 赤い剣の柄を握っていたノクトの手は火傷の跡ができていた。その上握った手のところどころに鋭利な刃物で切られたような切り傷もできていた。

 切り傷から血が滴り落ちていた。


「時間が経って徐々に力を取り戻し出したか。早めに手懐けないと」


 ノクトは怪我をした手に治癒魔術で怪我を治しながら赤い剣を見ながら呟いた。

 無防備で旅をしていたノクトは旅の道中、魔物に襲われた時に魔術で撃退していたが、さすがに聖剣を持っていないと勇者の力が宝の持ち腐れとなってしまう。

一刻も早く聖剣を手に入れる事を身近な目標にしたが最初に見つけた聖剣が持ち主として拒絶されては使えない。


 ノクトはまた新しい聖剣を探すしかないと頭の奥で考えていた。

 そう考えているとノクトの傍で封印の布に包まれていた赤い剣は独りでに布と布の隙間から赤い光と力を放ち出した。


 ノクトは急な状況に驚愕するとすぐに封印の布に包まれた赤い剣の柄を握った。

 柄を握ったノクトは柄を握る反対の手を封印の布の方を触った。

 ノクトは柄を握る手で力を放とうとする剣の手綱を握り、もう一方の手で封印の布の封印の力を強くしていた。


 今にも暴走しそうな赤い剣を宥める作業にノクトは意識を集中させた。

 今までに握った事のある聖剣は比較的おとなしくノクトの言う事を聞いてくれた。しかし今握っている剣はあまりにも暴れて手綱を握るノクトに反抗的だった。


 握った剣の機嫌を宥めていくと封印の布から漏れ出ていた光と力は落ち着きを取り戻して消失していった。


「やっと落ち着いたか、もう少しは落ち着きを持ったらどうだ」


 剣に対して言葉を使って説教をしたノクトは傍から見れば独り言を呟く変な人と見られるだろう。

 赤い剣の暴走を止めたノクトは封印の布を身に付けて部屋を出て行った。

お疲れ様です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。

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