第一話(表裏)
光のない暗黒の空間にノクトはいた。
ついさっきまで到着した村の宿にいたはずのノクトはいつも間にか暗黒の空間に立っていた。
「またお前も呼び出されたのか?」
ノクトは暗黒の空間で目の前に立っている魔力の靄に話しかけた。
『そこまで我と会うのが気に食わないのか。流石に悲しくなるな』
魔力の靄から声とは違う頭の中に響く言葉がノクトに届いた。
「俺はお前に会いたくて会ってるわけじゃない。魔王」
目の前にいる魔力の靄——魔王にノクトは嫌な顔を浮かべた。
『その通りだな。我々の意志に関わらず面会してしまうこの空間はノクトにとって苦痛でしかないだろう』
「分かっているならすぐにここから出しやがれ」
魔王は自身と会う事に拒絶反応を見せるノクトの思いを理解しつつ自分では制御できない事に魔王も難儀していた。
その思いを無視するようにノクトは魔王にすぐにこの空間から出すように要求した。
『それができるのであればノクトの嫌がる事はしたくない。けれど我々の意志でどうしようもない以上我慢してくれ』
ノクトから無理問答を言われた魔王はノクトに我慢するように伝えた。
「俺はお前なんかと一緒の空間にいたくない。虫唾が奔る」
『それこそ我慢してほしい。ノクトにとって苦痛なのは初めてここで面会した時から知っている』
「分かってるならさっさと俺の視界から消えてくれ」
『すまないが我は肉体がない故にここから移動できない。我を見たくないのなら悪いがノクトが移動してくれ』
ノクトが顔も合わせたくない魔王に対して悪態を吐くが魔王は申し訳なさそうに返答した。
ノクトと魔王がこの暗黒の空間に現れたのはこれで十一回目だ。
なぜここに召喚されるのか分からないまま互いに伝える事がなくなり、ここにいる意味がなくなったノクトにとって苦痛以外の何物でもなかった。
『それに時間が立てばここから抜け出せることはノクトも知っているはずだ。我に殺気を放つ事はやめてほしい』
「それは無理な話だ。俺はお前を滅ぼしたくて仕方ないんだ。それに俺もこの場から一歩も動けないんだ」
ノクトは魔王と面会する暗黒の空間で体を自由に動かせない苦痛でとげとげしい殺気を放っていた。
そんなノクトと魔王の間に一点の光が顕現した。
「やっとここから出られるのか」
『そのようだな』
ノクトと魔王は目の前に現れた一点の光を見ると互いにここから出られる事に安堵した。
目の前に現れた一点の光が徐々に輝きを増していくと暗黒の空間を満たす程の強烈な光となりノクトと魔王を呑み込んだ。
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