第四十九話(裏)
「本当にどうしたの?」
レイラは明らかに様子のおかしいシャルに声をかけると視界に映るシャルは無言のまま摘出した《写し鏡》を手に取った。
「……そうですね。これでレイラさんとお別れできると思うと気が楽になります」
シャルが口を開くと同時に傍にいるレイラを魔術によって吹き飛ばした。
「っ⁉」
吹き飛ばされたレイラは受け身が取れないまま地面に転がったせいで体中に鈍い痛みが奔った。
「悪く思わないで下さい。私も《写し鏡》を手に入れたがってたのはレイラさんも知ってたはずです。レイラさんも《写し鏡》を摘出された時に分かっていたと思ってました」
レイラを吹き飛ばしたシャルはレイラを見下ろす視線で低く平坦な声音で話し出した。
「今まで私はあなたが嘘を吐いていたように私も貴女に嘘で騙してきました。《写し鏡》を手にした今、レイラさんとは友達でいる意味がなくなりました」
シャルは手にした《写し鏡》を懐にしまうとレイラから離れるように足を踏み出した。
「さようなら。レイラさん。お別れです」
そう言うとシャルは黒い炎を体中に纏い出す。黒い炎が体中を包むと、黒い炎がゆらゆらと揺らぎながら消えていく。
黒い炎と共にシャルの姿が跡形もなく消えていたのを見てレイラは鈍い痛みの精なのか、歯を食いしばって消えていった黒い炎を視界に映していた。
「やっと戻ってきましたか。シャルロット」
悪魔の根城にいたタウは姿を現したシャルを見てすぐに声をかけた。
「目的の物よ」
シャルは懐に締まっていた《写し鏡》をタウに投げるように渡した。タウは投げられた《写し鏡》を受け取るとシャルの方を再度見た。
「どうかしたのですか?」
視界に映ったシャルの様子にタウは口を開いて言葉にした。
「……少し一人にさせて」
そう言ってシャルは自分の部屋へ足を進めた。
タウの視界に映ったシャルはいつ溢れるか分からない程目元に涙を蓄えていた。
「人間というのは難しい生き物ですね」
横を通り過ぎたシャルを見送った後、タウはぼそっと呟いた。
一つしかないものを手に入れるために行動した二人が行き着く先が決別という結果になるのはタウは理解していた。
それをシャルは理解していたのか分からないが、絶好の機会でシャルが手にしたのは友情ではなく元々の目的の物である《写し鏡》だった。
そして手に入れた友情を切り捨てたの友情にシャルは涙を流している。
よく考えれは両立できないものを天秤にかけていたシャルに待っていたのは今の苦汁を舐めた結果になるのは自明の解だった。
その結果を盲目にさせたのは予定外の友情だった。
レイラと出会い、共に行動して、シャルはどこか浮かれていたのかもしれない。
だからこそ失うのを分かっていた雨雨情に盲目となり失った後で後悔していた。
シャルの意識と共有していたタウはシャルの今の心情を理解できた。しかしその原因がどこから起因するものなのか知ることができなかった。
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これからも投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。