第四十八話(裏)
『そこの少女がシャルロットを殺そうとしたのは何者かがシャルロットを殺すために《写し鏡》経由で操ったのです』
シャルの頭の中でタウは平坦な声でレイラがシャルを殺そうとした理由を伝えた。
『その操った人は誰なのか知ってるの?』
頭の中で説明するタウにシャルは質問を返した。
『実際に《写し鏡》を見ないと分かりませんが、私達悪魔にとって敵という事はすぐに理解できます』
シャルの質問にタウは平坦な声で確証のない事実を説明する。
『ただ今の状況は私達にとってこれ以上ない機会です。すぐに《写し鏡》を持ってここから立ち去って下さい』
タウがシャルに指示を出すとシャルは眉間にしわを寄せた。
『シャルロットの気持ちも分かります。友であるそこの少女を放っておいて《写し鏡》を奪いこの場から立ち去る。良心が痛むのも理解できます』
シャルの頭の中で状況を理解できているタウはシャルの気持ちも汲みながら言葉を発した。
『だったら——』
『私達の目的は《写し鏡》の入手です。これ以上騒ぎを広げるのは私達の願っている事ではあるません』
シャルの言葉を遮るようにタウの意識がシャルの言葉を横から割り込んだ。
タウの言う通り、シャルの本来の目的は《写し鏡》を探し出し、悪魔の根城へ持ってくる事。そして今の状況は本来の目的を達成するにはこれ以上ない好機だ。
「どうしたの?」
頭の中でタウとやり取りしている中、レイラはシャルに言葉を発した。
レイラの言葉にシャルは少しの驚きを見せた。
「い、いえ。何でもないです。どうしたのですか?レイラさん」
「それはこっちの台詞よ。一人で難しい顔してどうしたのよ?」
レイラの指摘にシャルは気づかないうちに一人で険しい表情をしていた。
シャルはレイラの指摘をはぐらかすように苦笑を浮かべていた。
『ここで時間を使わないで下さい。すぐに《写し鏡》を持って私達の根城に戻って下さい』
レイラをごまかしている時シャルにタウは無駄に時間を使わないように忠告した。
『分かってる。けどレイラさんを助けた後でも遅くないわ』
シャルは意識を共有しているタウに言葉を返すとタウの意識が一瞬歪んだのを感じた。
『シャルロット。あなたはそこの少女と友達になるためにこの学園に潜入したのですか?』
タウが初めて共有している意識の中でシャルに強めの語気で話し出した。
『あなたの役目は《写し鏡》を探し出して魔王様の元に届けることです。そこの少女を助けることはその役目の中に含まれません』
タウの言葉は的確な言葉だった。
シャルの役目は《写し鏡》を魔王の元に届ける事。そしてその役目にレイラを助ける事は含まれない。
友のレイラを助けていてはこの場から退散する絶好の機会を潰している事と同じだ。
頭の中では理解できている事にシャルは心の中で歯を食いしばった。
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