第四十四話(裏)
《写し鏡》を持つ手を強く握るとレイラの手から光の粒子が収束していき、《写し鏡》を包んだ。
光に包まれた《写し鏡》は一瞬にして光の粒子に変換されて握っていた手に吸収されていく。
体内に《写し鏡》を吸収したレイラは目の前から光の矢を複数顕現させた。
シャルはレイラが顕現した矢を見て一層警戒心をそばだてた。
レイラの顕現した光の矢は前に白髪の男がシャルと戦った時に攻撃した時と同じ古代神聖術の術式であるのをシャルは見抜いた。
シャルに向かって放たれた光の矢をシャルは自身を囲うような淡い光の壁を顕現させた。
顕現した淡い光の壁に放たれた光の矢は阻まれて地面に落とされた。
「流石に一度受けた攻撃は喰らわないようね?」
「その通りです。この前の白髪の人が攻撃した方法でも私には通用しません」
レイラが攻撃した古代神聖術の術式は現代神聖術や魔術に対して無効だが、同じ古代神聖術に有効である。
それを知ったシャルにとってレイラに防げない攻撃を探す方が難しい。
「確かに防がれるようになったのは困るけど、これを防ぎ切れるかしら?」
そう言うとレイラの目の前にいくつもの光の弾丸が顕現した。席程の光の矢よりも強く濃度の高い光を放つ弾丸がシャルに向けて一斉に放たれた。
放たれた光の弾丸にシャルは瞬時に古代神聖術の術式で顕現した光の壁を顕現する。しかしシャルの顕現した控井の壁をレイラの放った光の弾丸が光の壁を貫いて粉々に砕いた。
光の壁を砕いた光の弾丸にシャルは体に掠めた。光の弾丸が掠めたシャルの殻の部分から血が流れた。
「いくら古代の術式も防ぐ盾を顕現できても、《写し鏡》の新たな依り代となった私の攻撃を防ぎ切るのは無理に近いわ」
レイラの言った通り、古代神聖術の術式で顕現した壁を簡単に貫いた弾丸はレイラの攻撃力がシャルの防御力を上回っている事を証明した。
「レイラさんの目的は《写し鏡》の依り代の方に昔と今の聖典の内容に違いがあるのか知りたかったはずです。それえと私に攻撃する事に何かつながりがあるのですか?」
急に掌を変えて協力者だったシャルに攻撃をしてくるレイラに行動の一貫性が分からないシャルは言葉にしてレイラに質問した。
「そうね。答えるとしたら今の攻撃は私の意志ではなく、《写し鏡》自身の意志で私に攻撃させたの」
シャルに説明したレイラの瞳にはレイラ自身の意志の輝きとは別の神々しく強い輝きが宿っていた。
「だったら攻撃をやめるように《写し鏡》に頼んでくれませんか?」
シャルは光の弾丸化掠めてできた傷を押さえてレイラに頼んだ。
「それができてたら今あんたに攻撃してないわ」
シャルの視界に映るレイラの様子はいつものレイラ通りに見えるのだが、どこか言い表せない違和感も覚えた。
「さっきも言ったけど、あんたが選択するのは《写し鏡》を手に入れるために私を殺すのか、私に殺された負け犬になるか、その選択しかないわ」
レイラが掌を前に出して再び攻撃を仕掛けようとした寸前、シャルはくすっと笑った。
「知っているはずです。私はレイラさにょり賢くありません、《写し鏡》に操られているレイラさんを殺して《写し鏡》を手にする事も、殺された負け犬にもなる気は毛頭ありません」
レイラに向けたシャルの瞳はいつもの飄々とした輝きではなく真剣にレイラを見つめる輝きを宿していた。
「友達を殺してまで《写し鏡》を手にするほど堕ちた覚えはないのでね?」
お疲れ様です。
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