第四十二話(裏)
鍔迫り合いをしているシャルとネイラルグは同時に互いから距離を取った。
シャルは魔術による雷撃を、ネイラルグは神聖術による光の砲弾を放った。互いに放った攻撃が衝突するとすさまじい閃光を上げて目の前を一瞬で眩くした。
シャルは反射的に目元を腕で隠すと同時に握手をしてしまった事を自覚する。
目の前の情報を反射的にでも遮断してしまったのは致命的だ。
そんな事を頭によぎったシャルに斬撃が飛んでくる。咄嗟にシャルは握っている剣で防ごうとするもほんの一瞬、動きが遅かったシャルの脇腹をネイラルグの剣が切り裂いた。
「グッ⁉」
脇腹を斬られたシャルは痛みに苦悶の表情を浮かべた。
シャルは斬られたわき腹を反射的に空いた手で押さえた。
抑えた手には赤黒い液体がべっとりと着いていた。
「今の一撃で胴体が真っ二つになると思ってたんだが、わき腹の一部を斬っただけか」
ネイラルグは握った剣に付着したシャルの血を振り払いシャルに与えた斬撃の部位を見て想像よりも浅い切り傷だったことに驚いていた。
「教授こそ、目の前に閃光がさく裂した状態で私を的確に斬りかかれたこと自体人間業ではないです」
シャルはそう言いながら傷口に治癒の神聖術でネイラルグに斬られた傷口を塞いだ。シャルが傷口を完全に塞ぐと再び剣を構えた。
シャルはネイラルグを睨みながら構えた剣を逆手に持ち替えてその場の地面に勢いよく突き刺した。
地面に突き刺さったシャルの剣から光の波紋が広がりネイラルグの立っている足元まで広がると、光の波紋はネイラルグと衝突して干渉した。
光の波紋が干渉するとネイラルグの足元から数多の光の槍が突出してネイラルグの体をいくつも貫いた。
「ガㇵッ‼」
光の槍でいたるところを貫かれたネイラルグは貫かれた光の槍で動きを封じられた。
光の槍で貫かれて動きまで封じられたネイラルグは激痛によって表情を歪めた。
「……自分は胴体を真っ二つにされそうになったのに、……私には急所を外して光の槍を差すなんて。……君は少し詰めが甘い」
激痛を堪えながら口を開くネイラルグは自身の体を貫いた槍全てが急所を完全に外したシャルの攻撃に若干苛立ちを含んだ声音で言葉を紡いだ。
「私は教授を殺すためにここへ来てません。目的が果たせるのであれば殺す必要のない命を無駄にするのは私の主義に反します」
ネイラルグの言葉にシャルは自身の主義を口にした。
「……君の主義はとても甘い。……いつか後悔するぞ?」
「先達の言葉として受け取っておきます」
シャルは顕現した剣を消失させながら光の槍で身動きが取れないネイラルグの言葉を聞いてヘ時を返した。
シャルは身動きの取れないネイラルグに掌を伸ばした。
「今回の出来事を他の人に話さないように記憶を改竄させてもらいます」
シャルの掌から妖しい光が照らされるとネイラルグの瞳に意志を感じる光が消えた。
ネイラルグの記憶を改ざんしているシャルは同時にネイラルグの体を貫いている光の槍を消失させた。
ネイラルグの体にできた傷口を治癒するシャルはネイラルグを地面に横にした。
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