第四十話(裏)
部屋の外に出ていたシャルは周囲の気配に精神を集中させていた。
ここまで誰とも出会っていないが、ここにシャルとミラーが来る事はわざと仕掛けられているのは二人共理解している。
すぐにでも何者かが狙って襲ってきてもおかしくない。今は二人のミラーの積もる話もあるのだろうし、シャルは一層周囲の状況を把握してすぐに行動できるようにするべきだと言い聞かせていた。
シャルがそう考えているとどこからか誰かの足音が空間中に響き渡っていた。
シャルは掌に魔法陣を浮かべて漆黒の剣を顕現させた。
「やはりここへ来ていたようだね。シャリスティア・セイレーン」
顕現した剣を構えたシャルは話しかけてきた声の方を振り向いた。
シャルが振り返って視界に映ったのは白衣を着た一人の女性だった。
「そこまで殺気を振りまいてると私以外にも侵入されたことを学園の誰かに知られてしまうよ?」
薄暗い空間のどこからかシャルの様子に忠告する声の主は薄暗い空間の陰から姿を現した。
「やっぱりあなたの仕掛けた罠ですか。ネイラルグ教授?」
シャルは声の聞こえる方を睨むと影から現れた人物——ネイラルグにシャルは剣の切っ先を向けた。
「罠とはひどいな。それに自分から君達の言う罠に入ってきたのは君達だよ?罠だと分かっていて飛び込むのは蛮勇としか言えないよ」
「そうですね。けど、私の友達が何の策もなしに罠が張られる場所に来ると思ってますか?」
ネイラルグの言葉にシャルは不敵な笑みを浮かべて言葉を返した。
シャルが浮かべた不敵な笑みにネイラルグは微妙な違和感を抱く。
「一教師として学生が立入禁止区域に足を踏み入れた事実は見逃せないね。すぐにここから出て厳正な処分を下したい。大人しく投降してくれないか。シャリスティア・セイレーン?それともシャルロットと言えばいいのかな?」
ネイラルグの口からシャルの本名が飛び出した直後、シャルは眉をひそめて足を踏み出していた。
足を踏み出した瞬間シャルは握った剣から魔術を発動させて雷を纏わせた。
ネイラルグの懐に入り込んだシャルは雷を纏わせた剣を振るった。シャルの振るった剣をネイラルグは後ろに下がって躱した。
シャルはネイラルグが後ろに下がって躱す事を想定して剣に纏わせた雷を振るった直後に放った。
剣から放たれた雷は後ろに下がって躱したネイラルグに向かって飛んでいく。シャルの放った雷がネイラルグの体に触れる寸前、ネイラルグはわずかに光る盾を掌の前に顕現させた。
ネイラルグが顕現した盾にシャルが放った雷は弾かれてネイラルグに命中しなかった。
「流石は戦闘慣れしているだけはアル。躱された後の血劇まで想定した攻撃は称賛に値するよ」
神聖術で追撃を防いだネイラルグは余裕の笑みを浮かべてシャルに攻め方を称賛した。
「称賛するくらいならここは手を引いてくれませんか?」
余裕の笑みを浮かべるネイラルグと違い余裕が一切感じられないシャルは冗談抜きでネイラルグに手を引いてくれないか提案した。
「それは絶対にできないよ。なんて立って君は国中に指名手配された犯罪者。それが学園の可愛い学生と言えどそれは代えられない」
シャルの提案にネイラルグは冗談っぽく提案んを拒否した。
そして次の瞬間、ネイラルグは掌をシャルの方へ伸ばした。伸ばした手から純白に輝く炎が放たれてシャルの方へ襲い掛かっていく。
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