第三十六話(裏)
光の柱に呑み込まれたシャルが光から出るとそこはつい先程いた外ではなくオレンジに灯るランプがいくつもシャルがいる空間の詳細を教えてくれた。
オレンジのランプに照らされた空間は鉄骨が剥き出している無骨で広い空間だった。広い空間の壁にはいくつもの鉄扉が並んでいた。
「ここが法具の保管場所か」
シャルは視界に映る空間の壁を見てすぐに学園が法具を保管している保管場所だと理解した。
視界に映る壁の鉄扉全てに法具が保管されているとなると目的の《写し鏡》がどこに保管されているのか分からない、
もしシャルが先に《写し鏡》の保管している鍵の術式を手にしてなければすぐに元の場所へ撤退していただろう。しかし今のシャルは写し鏡を保管する鉄扉の鍵となる術式を手にしている。
ミラーから渡された鍵となる古代神聖術の術式を展開するシャルの周囲から光の粒子が漂い出してシャルの周囲からどんどん広がっていく。
光の粒子がシャルのいる空間に隅々まで広がると鉄扉の一つから鍵の開く音がした。音を鳴らした鉄扉は独りでにゆっくりと開いていく。
シャルが展開した術式によって鉄扉が開いたようだ。
シャルは開いた鉄扉の方へ進んでいく。開いた鉄扉の傍に着くとシャルは十分警戒しながら鉄扉の奥を確認する。
鉄扉の奥にはシャルのいる空間と同じオレンジのランプが灯っている。そしてランプが灯っている所に誰かが椅子に座っている影が床に広がっていた。
シャルはすぐに臨戦態勢がとれるように準備すると鉄扉の奥へ足を踏み入れた。
ゆっくりと足音が鳴らないように進んでいくとシャルの視界には椅子に座って床に影をつくった人物の姿が映った。
簡素な木製の椅子に座っているのは一人の女性だった。
床に触れる程長く伸びた髪や目元の長い睫毛は純白に染まり、長く火を浴びていないのが分かる程白い肌と白い肌と対極の黒いワンピースを着た二十代後半の女性が椅子に座ったままシャルと視線があった。
シャルと視線が合った女性は顔色一つ変えずにシャルを見続けた。
「お客様なんていつぶりかしら?」
口を開いた女性は見た目こそ和解が言葉の雰囲気には見た目以上の凄みが感じられた。
「勝手に貴女の部屋に足を踏み入れて申し訳ございません」
シャルは警戒心を総動員させたまま女性のいる部屋に許可も取らず部屋の中に入ったことを謝罪した。
「いえ。私も長い事人と話してきませんでしたからどんな状況であっても嬉しいですよ」
シャルと対面している女性はシャルが警戒心を向き出しているのに気空いたのか話す口調が先程より柔和になった。
「不躾な質問なのですが、あなたは何者ですか?」
シャルはここに来るまでの学園での時間でおおよそ女性が返してくる言葉を予想ができていた。
「そうですね。話をするのですから自己紹介をしなければいけませんね——」
目の前の女性が口を開くと女性の口から想定された言葉が出てきた。
「——私はミラー。ミラー・ガブリエル。《写し鏡》の依り代です」
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