第三十四話(裏)
シャルがフレデリカを操って教師棟の中を調べて小一時間。
ミラーが指摘した部屋をいくつも調べてすでに目星を付けた部屋がなくなってきていた。
「次はこの部屋に動かして」
ミラーが魔法陣の上に浮かぶ立体的な見取り図の部屋を指差すとシャルは「分かりました」と返事をしてフレデリカをミラーが指摘する部屋へ移動させた。
ミラーが指摘した部屋の前に着くとフレデリカの視覚を共有したミラーとシャルは漆黒の鉄扉が映った。
鉄扉を開くと、鉄扉の先の部屋は灯りが全くない暗闇だった。
シャルはフレデリカを伝って指先に光を灯した。フレデリカの指から生まれた光源によって暗闇だった部屋の内観が明らかとなる。
暗闇だった部屋は本や書類が散乱して部屋の空気も埃っぽい。
部屋の奥には埃を被った机がありその上には羊皮紙が置かれていた。
「あの羊皮紙、おかしくないですか?」
フレデリカの視界に映る羊皮紙に違和感を覚えたシャルはミラーに話しかけた。
「そうね。机の上は埃まみれなのに羊皮紙には埃が被ってないわ」
ミラーの言う通り、机の上には埃が被っているのに羊皮紙の上には埃が被ってない。つい最近机の上に羊皮紙が置かれた証拠だ。
シャルがフレデリカを動かして羊皮紙が置かれている羊皮紙を手に取ると、羊皮紙には何かの文字が記されていた。
「これは古代神聖術の暗号ね」
フレデリカと視覚を共有しているミラーはフレデリカが手に取った羊皮紙の文字を見てすぐに羊皮紙の文字を古代神聖術の暗号と判別した。
「この羊皮紙を持ち出しますか?」
「そこまでしなくていいわ。誰かの罠にしてはあまりに露骨すぎる。それにこの程度の暗号ならもう解読できたわ」
シャルの提案にミラーは羊皮紙を持ち出す事に異を唱えた。
「この羊皮紙の暗号の内容は何だったのですか?」
シャルが羊皮紙の暗号について尋ねるとミラーは口を開く。
「学園に保管されてる法具の場所へ転移する術式よ」
ミラーから告げられた言葉にシャルは目を大きく見開いた。
シャルの様子に気付いたミラーは更に言葉を紡ぐ。
「この羊皮紙といい、ネイラルグ教授の言葉といい、明らかに罠が仕掛けられているはずよ」
ここまで都合よく羊皮紙に記されている暗号の内容や最近の枯れたばかりの状態を見て明らかにシャルとミラーをおびき寄せているかのようだ。
「そうですね。けれどもう後には引けませんよ。私達は後に引けない所まで足を踏み入れてしまいました」
「えぇ。それに私の策の中に“撤退”の文字はないわ。どんな罠だろうと力尽くで《写し鏡》を手に入れるまでよ」
ミラーの言葉を聞いたシャルは少しだけ笑みをこぼした。
「本当にミラーさんが敵でなくて良かったです」
「あら、奇遇ね。私もあんたと同じよ。敵でなくて心底良かったと思ってるわ」
シャルにつられたのかミラーも苦笑を浮かべた。
「この羊皮紙の暗号は覚えたし、他に探す場所もないから一旦フレデリカ教諭を教師棟から出すわよ」
「分かりました」
ミラーの指示に了承したシャルは操っているフレデリカを教師棟から出る道に進ませる。
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