第三十三話(裏)
フレデリカを操るシャルはミラーの指示に従い、教師以外立ち入り禁止区域を探索してしばらくが経過した。
探す場所もだいぶ減ってきたが、今まで探した場所には手掛かりになりそうなものはなかった。
ミラーが次にフレデリカを操って探してもらう場所をシャルに指示をすると、フレデリカの視線の先には白衣を羽織った女性がこちらへ歩いてきた。
「ネイラルグ教授です。どうしますか?」
シャルはフレデリカと共有した視界の先に映るネイラルグにどう対応するかミラーに質問する。
「会釈だけでいいからすぐに去るのよ。操られているのがバレたらここまで大掛かりな策を練った意味がなくなるわ」
シャルの質問にミラーはすぐに答えた。
ミラーの言う通り、ここでネイラルグにフレデリカが操られている事が露呈してしまえばここまでの大規模の陽動の意味がなくなってしまう。
「分かりました」
シャルは一言だけで肯定の意を告げると操っているフレデリカを通り過ぎようとするネイラルグに会釈をさせて通り過ぎようとする、その時——
「まさか、ここまで大掛かりな仕掛けをしたのがただの学生の二人だとは驚いたよ」
フレデリカと通り過ぎようとした寸前、ネイラルグから放たれた言葉にシャルが操っているフレデリカを含め、視界を共有しているシャルとミラーもあまりに突拍子のない事態に驚きを隠せなかった。
「何を言っているのですか。ネイラルグ教授?」
シャルは咄嗟に操っているフレデリカ伝でネイラルグの言葉をうやむやにしようとした。
「しかもフレデリカ教諭の肉体を操って教師棟に侵入したその技量も称賛に値する。けど少し詰めが甘かった。君達の行動は途中から私の監視下にあった。その時点で君たち二人は私の手の内で踊ってた、ということだ」
ネイラルグの言葉を聞き取ったフレデリカ越しに伝わったシャルとミラーは緊張で表情が強張った。
「まあ、私は君達が学園に楯突かないのであれば今回の事は黙秘してあげる。なにせ学園を襲撃した者達を捕まえるために尽力した功労者だからね」
ネイラルグはフレデリカの横へ通り過ぎたネイラルグが告げた言葉の後にはネイラルグの姿が消えていた。
フレデリカの視界から消えたネイラルグの言動に始終緊張感が張り詰めたシャルとミラーはネイラルグの姿が消えた直後、張り詰めた緊張の糸が弛緩された感覚を覚えた。
「ネイラルグ教授、いったい何者なの?」
先に口を開いたのはミラーだった。ミラーが口にした言葉にシャルも同意見だった。
二人は確かに《写し鏡》を探す時は周囲の気配に感覚を研ぎ澄ませて誰もいない時を狙ったはずなのに、古代神聖術の術式を狙った白衣の男やシャルが戦った白髪の仮面の騒動の核になる人物と知った上で見逃してくれるネイラルグの意図が分からない。
「あの様子だとネイラルグ教授は本当に私達の行動を黙秘する感じでしたが」
「教授の真意がどうであれ、今は見逃してくれるのは助かるわ。それにいつ掌を変えられるか分からないのも事実。できるだけ早く教師棟にあるかもしれない手がかりを探すわよ」
ミラーの言葉に「分かりました」と伝えるとミラーは次に探す場所をシャルに伝えて、シャルはミラーの指示通りにフレデリカを動かした。
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