第二十八話
「手を組む……だと?」
目を大きく見開いたノクトは魔王の提案に耳を疑った。
『そうだ。我もノクトも先の未来像が違っているが、そこまでに行き着く手がかりが同一だ。ならばそれまで手を組むのは悪くない提案だと思うが?』
魔王の話にノクトは合理的な提案だと頭の中で理解できている。しかし感情論で言えばノクトは魔王の提案すら聞きたくなかった。
今まで育ての親のエドワードを殺し、シャルと敵対関係になってしまった元凶の魔王と協力したくないと心が訴えかけている。
「俺が敵のお前に組すると思ってるのか?」
頭の中に語り掛ける魔王にノクトは憤怒を押さえつけて魔王に話した。
『今は難しいだろうが、我の考えにノクトは必ず賛同すると確信している』
「人を殺してまで叶える平和なんて俺は否定する!だから俺はお前の存在とお前の望む未来も否定する!」
魔王の言葉にノクトは真っ向から否定の意を告げた。
『そうか。我の話を聞けばノクトは必ずこちらの目的に賛同するだろうが、それは今ではない。時が来たらまた会うことにしよう。我の唯一の子孫よ』
ノクトの頭の中に語り掛けてきた魔王の声が途切れると、ノクトは死体が転がっている部屋から出て行った。
ノクトは王宮の外へ出るとそのまま王都に繋がる門まで足を進めた。
「どこへ行くのですか。ノクト?」
門前まで進んだノクトに誰かが声をかけた。
ノクトは声が聞こえた声の方を振り返ると振り向いた先にはシルフィーがいた。
「これから俺には師匠から任された約束を果たしに行く。だから俺は王都から去る」
視界に映るシルフィーにノクトはこれからの動向を口にした。
「それはたった一人で動く意味はあるのですか?」
シルフィーの意見はもっともだ。ノクトに託された目的は決して一人で行わないといけないわけではない。
「これは俺に託されたものだ。他の人を巻き込むわけにはいかない」
ノクトは振り返って視界に映していたシルフィーを外して元の門前に視界を戻す。
「それに、しばらく俺は一人になりたい」
ノクトは門を潜りながらシルフィーに話した。
「どうして……、どうしてそこまで一人になりたいのですか?」
門を潜ろうとしたノクトにシルフィーは声を出した。シルフィーの言葉にノクトは聞こえているはずなのに一切返事をしなかった。
ノクトが門を潜るとそのまま王都の外へ続く道を進んだ。
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