第二十七話
「魔王……だと……⁉」
頭に直接聞こえる声にノクトは誰もいない部屋で声を出してしまった。
『そうだ』
ノクトが口にした言葉に頭の中に響く魔王の声はノクトの言葉に肯定する。
『ずっとノクトと話がしたかった。我の子孫で勇者となったノクトが望んでいる世界を知りたい』
魔王の言葉の真意をノクトは理解できなかった。
「何でそんなことを俺に聞く?」
頭の中に響く魔王の言葉にノクトは聞き返してしまった。
『我はこの世界をより良い方向に変えるためにノクトの意見を聞いてみたかった』
「そんなの決まってる。俺はお前を滅ぼしてジジイの敵を討つ!それ以外に俺の望みはない!」
魔王の問いにノクトは怒りを滾らせて返事をした。
『そうか。ノクトはあの男を殺した悪魔と我を滅ぼしたいことは嫌という程伝わった。だがその先にノクトは何を望む?』
魔王の言葉はノクトの意見を否定しなかった。そしてノクトにその先の未来について尋ねた。
『我を殺した先にノクトの望む世界が安寧な世界であれば我は再び滅ぼされても構わない。だが、ノクトの望む先に本当の平和がなければ我はノクトと戦うこともいとわない』
「…………」
魔王の言葉にノクトは一言も口にしなかった。
魔王は自身の命よりも世界の平和を望んでいる事は伝わった。
「……お前が言う平和が人を殺して得られるものならその平和は嘘っぱちだ!」
ノクトが口を開いて言葉にしたのノクトの声には憤りと苛つきが混じっていた。
『確かに我の眷属の悪魔はお前の育ての親を殺した。だが我を再び滅ぼそうとしている者達はその先の平和を考えているのか?』
魔王の言葉にノクトは言葉を詰まらせた。
ノクトは育ての親であるエドワードを殺した復讐のために、他の勇者側の人間は聖典に記されている平和の道のために魔王を滅ぼそうとしている。
その聖典に虚偽がある時点で聖典に記されている魔王を滅ぼした先に平和があるかノクトは疑心暗鬼になった。
『ノクトも聖典の原本の内容を知るために聖騎士から頼まれたはずだ』
「なぜそれを知っている⁉」
魔王の言葉になぜレイノスに頼まれた事を知っているのかノクトは聞き返した。
『我らも聖典の原本を調べるために悪魔やシャルロットの力を借りている。シャルロットも本当の平和のために我に力を貸している』
聖典の原本を魔王も調べている事にノクトは驚きの表情を浮かべた。
『ノクトは本当に我を滅ぼした先に平和があると言い切れるか?我は聖典によって世界を操っている物がいると考えている。そう思えてならない』
魔王が語る推測にノクトはすぐに否定できなかった。
意図的な細工で聖典に虚偽があるとすれば聖典によって操れているという可能性もゼロと言い切れない。
『我とノクトの望む先の未来が違うとしても背の手掛かりとなる聖典の原本を欲しているのは変わらない。そこで我に一つ提案がある』
魔王はノクトに一つの提案を聞く。
『我と意識が共有できる今、聖典の原本を手に入れるまで手を組まないか?』
魔王の提案にノクトは目を大きく見開いた。
お疲れ様です。
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これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。