第二十六話
大広間から出て行ったノクトは王宮の最上部、王族が住まう部屋に進んだ。
ノクトが市場部へ足を踏み入れた瞬間、部屋中に鉄臭い臭気が漂っていた。その部屋を進んでいくノクトは奥の部屋に入ると視界に映ったのは部屋全体が赤黒く染まった空間だった。
血で染まった部屋の中央には首から上のない体が二つ転がっっていた。
首から上のない死体が着ている服装からして国王レイモンドと聖母教皇サイグリューだろう。
転がっている国王と聖母教皇の肢体を見てノクトはもノクトは無表情のままだった。
「ざまぁないな。まさか自分の一番の駒に首をはねられるなんて思わなかっただろ?」
言葉だけなら今まで自分を追い込もうとした人間が死んで気分が晴れたような発言だが、ノクトの表情に生気が感じられなかった。
「……どうして、俺を生かすために師匠が泥をかぶらないといけないんだよ?」
次に言葉を零した本音を口にした瞬間、ノクトの頬に滴が伝う。
レイノスが企てた策は全て成功した。
レイノスは悪魔の手掛かりを失い打開策を立てるよりもノクトに八つ当たりをしていた状況にこれからの悪魔との対決に不安視した。そして国王や聖母教皇の利己的な思想で魔王の魔力を級数してしまったノクトに障害を与え続ける事は目に見えていた。
レイノスはいずれ悪魔のと対決で国王と聖母教皇のせいで勇者側が機能しなくなると読んだレイノスは国王と聖母教皇を殺して反旗を翻した。
その上でノクトを脱獄させて殺し合いをした。その時にノクトに殺されるシナリオまで考えてノクトがレイノスを殺すように唆したのもレイノスの手の内だった。
ノクトを反逆者のレイノスを殺した国の英雄に仕立て上げるために立てた策は完遂された。
ノクトは国王と聖母教皇の死体を見てレイノスの企てた策を理解した。そしてレイノスの手の内で踊らされた事よりも自分のために命を賭けたレイノスの言動にノクトは歯を食いしばった。
『それだけあの聖騎士はお前のことを案じていた。それこそ自分の命よりもお前の命が大切だったのだ』
ノクトは急に声が聞こえて周囲を見渡すが周囲には人の姿どころか気配すらなかった。
『どれだけ我を探そうが姿は見えぬぞ。ノクト』
周囲を見回しても誰もいない空間でノクトにはっきりと声が聞こえていた。
「誰だ!」
ノクトは気配のない相手に威嚇するような声といつでも魔術で攻撃できる状態になっていた。
『そこまで敵意を剥き出しても意味はないぞ。我はノクトの頭の中に直接語っている。そして我はノクトがいる王都にいない』
ノクトの球の中に語り掛ける声が臨戦態勢を取っているノクトにその行動に無意味と告げた。
『ノクトが我の魔力に順応したおかげでこうやって話すことができる。本来であれば直接話したかったがこのような不躾な方法で話すことになって悪いと思ってる』
「だから誰なんだって言ってんだよ!」
頭の中の声の主が一向に何者なのか口にしない事にしびれを切らしたノクトは誰もいない部屋で声を荒げた。
『すまない。自己紹介がまだだったな。我はお前の祖先で悪魔達の生みの親。ノクト達の人々から魔王と呼ばれる者だ』
ノクトの頭の中に語り掛ける声は自らを魔王であると口にした。
お疲れ様です。
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