第二十七話(裏)
別空間から学生寮の自分の部屋に戻ったシャルは未だに白髪白眼の男性の正体が人間でない事実と白髪白眼の男性の肉片から産まれた奇怪な生物の心証が残っているせいで顔色が真っ青だった。
シャルはとりあえず白髪白眼の男性から手に入れた古代神聖術の使い方を頭の中で反芻した。
今まで使用してきた神聖術との相違点を洗い出し、洗い出した相違点を他の方法で代替できないか探索、代替できる方法を見つけ出した。
シャルは古代神聖術の使い方を現代神聖術の発動構成要素で代替できると知ると、シャルは試しに古代神聖術を発動しようとする。
シャルは神聖力を練り、白髪白眼の男性から引き出せた古代神聖術の術式の一つを発動する。
掌に術式を展開して神聖力を流し込む。流し込んだ神聖力を今までの現代神聖術で代替した発動構成要素によって古代神聖術を発動すると、シャルの掌から光の短剣が顕現した。
「……この短剣⁉」
顕現した光の短剣を握るシャルは昨夜の白髪の仮面が幻術の中でシャルに放った光の矢と同じ力が宿っている事に驚いた。
使用した術式を解読できなかったが、実際に発動してみればその効果を実感できるとシャルは発見すると顕現していた光の短剣を消失させた。
「これで古代神聖術を使えるようになった。このことをミラーさんに伝えないと」
シャルは光の短剣を消失させた後、シャルの魔術で操る教師の候補の絞り込みをしているミラーの元へ行くために自分の部屋を出た。
寮を出たシャルは教師棟にいるはずのミラーを探しに行くと頭の中に響く意識が流れた。
『どうも、シャルロット。タウです』
シャルの頭の中に流れるタウの意識はシャルに挨拶をした。
『どうしたの。タウ?』
『先刻、シャルロットから受け取った呪術の術式を調べ終えました』
シャルが共有しているタウの意識に用件を尋ねると、タウは単刀直入に答えた。
『シャルロットがかけられそうになった呪術は古代呪術を現代呪術の手法で改良した呪術です。この呪術は解読できても私達悪魔の力でも発動できません。この呪術を使える人間も限られます』
『その口調からして使える人間の見当は付いているみたいね?』
タウの説明する中にその先まで見通している口調にシャルはタウに話の先を突き詰める。
『流石はシャルロット。勘の鋭さは私達悪魔以上の冴えですね』
『そんなことはいいから本題を言って』
タウの枕詞にシャルはすぐに本題を話すように促す。
『この呪術を使える人間はかつての勇者の血族である者しか使えません。しかもこの改良した術式の癖からするにガブリエル家の人間の誰かでしょう』
タウの共有した意識から伝わる『ガブリエル』という苗字にシャルは学園に編入当初から感じた違和感が解消した。
『その様子を見るにシャルロット。ガブリエル家の人間と面識があるようですね?』
『まあね。《写し鏡》を一緒に探している友達よ』
タウにガブリエルの人間との面識を尋ねられるとシャルは恥ずかしさの欠片もなくタウに告げた。共有した意識の中でタウに告げた言葉に、タウは笑い声をあげた。
『まさか、あのシャルロットに友達ができるとは思いませんでした』
『私に友達ができてそんなにおかしいの?』
『えぇ、その通りです。私達悪魔にも一定の距離を取っているシャルロットに友達ができたのが面白くて』
笑いながらシャルの意識の中で話すタウにシャルは頭の中で文句を告げた。
『シャルロットに友達ができたことは別に気にしてません。ですがより注意をして下さい。この呪術をかけた相手がかつての勇者の血族です。シャルロットの素性が知られればその友達は掌を返してシャルロットに牙を剥く敵になるかもしれません』
笑い声をあげて語り掛けていたタウの意識が一変して真剣な声音に変わった。
タウの言う通りかつての勇者の血族のミラーがシャルの素性を知れば友達と言えど掌を変えて敵になる可能性はないとは言えない。
『その時はそのときよ。いすれ敵になるかもしれない。けど友達として行動できる今の時間は大切にする』
『本当に、あなたは会った時から頑固なところが変わっていませんね』
シャルは自分の意志をタウに伝えるとタウは少し間をおいてタウが意識の中で話した。
『けど、その信念を貫く姿勢は嫌いではありません。シャルロットがしたいようにして下さい』
シャルの意識の中に話していたタウの言葉が途切れると、シャルは足を止めずにミラーの元へ進む。
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