第二十六話(裏)
本日の講義が全て終わりシャルとミラーはお互いにやるべき事のために別行動を取った。
シャルはすぐに学生寮の自分の部屋に戻り白髪の仮面を拷問している別空間へ転移した。
シャルが白髪の仮面を拘束した別空間へ到着するとシャルの目の前には手足を拘束されてすでに仮面を外された白髪の仮面が床に転がっていた。
白髪の仮面の仮面の下は真っ白な肌に白い瞳の言葉通り全てが白ずくめの男性だった。
仮面の下は端整な顔立ちだが、昨夜からシャルの幻術の中で延々と自分の前肢が切り裂かれ、突き刺される資格と痛覚を味わされているため、顔に生気は感じられず放心状態の様子だった。
「そろそろ自白してるれるくらい精神が壊れてくれると助かるのだけど」
白髪白眼の男性の近くへ歩み寄るシャルは掌に魔法陣を浮かべて足元の白髪白眼の頭に近付けた。
白髪白眼の男性にシャルの掌を近付けた瞬間、掌に浮かぶ魔法陣が広がり白髪白眼の男性の頭に吸い込まれる。
白髪白眼の男性に吸収された魔法陣はしばらくして白髪白眼の頭から抜け出した。
「どうしてこれだけ拷問しても魔術で記憶を引き抜けないの?」
シャルは白髪白眼の男性から抜け出た魔法陣を見て記憶を引き出せなかった事を知った。
「だったらミラーさんが解読した神聖術の使い方だけでも引き出せれば」
そう言うとシャルは白髪白眼の頭を直接触れた。
白髪白眼の男性の頭に触れたシャルの手から淡い光が溢れ出した。溢れ出した淡い光はシャルの掌から腕の方に向かって移動していく。
移動していく淡い光が肩まで届くと、掌の淡い光が消えていく。
「古代の神聖術の使い方は知れたけど、この男から全然情報を盗めない」
淡い光が消えて白髪白眼の男性の頭から放すと欲しい情報が得られない事に苛立ちを覚え始めていた。
白髪白眼の男性にかけている幻影は約一日の間視覚と痛覚を操って拷問を行っている。普通の人間なら一時間もしないで精神を崩壊している。
一流の魔術師でも半日もすれば精神がボロボロになり真実を吐かせる事は容易にできる。そのはずの拷問を一日中受けている白髪白眼の男性から未だに真実を吐かせられない。
「本当に人間とは思えない精神力ね」
シャルは床に転がっている白髪白眼の男性を一瞥した。するとシャルは口にした言葉にはっとする。
「この男、本当に人間なの?」
人の外見にあまりに酷似しているが、どんな人間でもシャルがかけた幻術に一日耐えきれるはずがない。
どれだけ精神力が強い人間でも半日は耐えられない。真実を吐かせるのにここまで時間のかかる人間は見た事がない。
シャルは魔術でナイフを顕現させた。顕現させたナイフで床に転がっている白髪白眼の男性の頬を切り裂き小さな肉片を切り抜いた。
切り抜いた肉片と切り裂いた部分から赤黒い血が流れた。肉片を切り抜いた本人の社の手も血まみれになっていた。
シャルの血まみれの手から魔法陣が浮かぶと、魔法陣から光の粒子が肉片に降り注いで肉片に纏い出す。
光のルイ意志が纏った肉片は次第に膨張して元の形状から逸脱していく。
シャルが形状を変える肉片を床に落とすと、床に落ちた肉片は肥大化して手が十本生えた真っ白な奇怪な生物が生まれていた。
奇怪な生物が生まれた瞬間、シャルはおぞましいものを見る目で床に十本の手を付いている奇怪な生物を見下ろした。
「……本当に人間じゃなかった」
シャルに切り刻まれた白髪白眼の頬はすでに傷口が塞がれて元通りになっていた。
シャルが切り取った肉片にかけた魔術によって肉片の細胞を未分化の状態に戻して急激に成長させた。
普通の人間であれば未分化の細胞を急激に成長させてもどこかの組織に移植しなければ変化などしない。それにもかかわらず切り取った肉片を未分化の細胞に戻して急成長させた細胞が奇怪な生物に変化した。
この時点で白髪白眼の男性は人間ではないと確定した。
十本の手が生えた奇怪な生物がシャルの元に刃五寄ろうとするおぞましい動きにシャルはすぐに魔術を張るどうした。
シャルが発動した魔術は眩い光を放ち、奇怪な生物を呑み込んだ。
呑み込んだ光が消えると、いたはずの奇怪な生物は跡形もなく黒い炭と化していた。
「一体何なの……。この男……?」
床に転がっている白髪白眼の男性に恐怖の視線を向けるシャルは謎に満ちた小隊に恐れを隠し切れずにいた。
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