二十四話(裏)
白髪の仮面の襲撃の翌朝。
シャルは学園の教室へ入った。
教室にいる女学生達は他の女学生といつも通りに他愛ない雑談をしていた。
シャルの視界に映る女学生の集まりの中心にミラーが席に座っていた。
シャルが教室に入り席の方へ進むとミラーを囲むように話している女学生はミラーの隣の席から物理的に距離を取り出す。
シャルは女学生の行動に慣れてしまった事に苦笑した。
シャリスティアとマリアが恋仲と誤解されてから女学生はマリアとの仲を取り持とうと二人の距離を近くしようと行動した。
勘違いとはいえ、共に《写し鏡》を探す協力者になってからは二人きりの時間を尊重してくれていたのは好都合だった。
シャルが女学生の空けてくれたミラーの隣の席に座ると、シャルはミラーの方を向いた。
「おはようございます。マリアさん」
シャルはミラーの学籍上の名前で呼ぶとミラーも口を開く。
「おはようございます。シャリスティア」
ミラーが口を開きシャルの学籍上の名前を呼ぶと周囲の女学生が一斉にシャルとミラーの方を見た。
シャルはミラーが名前で呼んで周囲の女学生から視線を向けられる意味を前にミラー本人から教えてもらった。
名前で呼び合う仲はこの学園では深い仲を暗喩する。
シャルは前にミラーの学籍上の『マリア・エヴァンテイン』の名義をマリアと呼んでしまいミラーに注意された。
そのミラーがシャルの学籍上の名義の『シャリスティア・セイレーン』の名前を呼んで挨拶した。その意味と周囲が感じる認識はミラー本人が身をもって知っているはずだ。それをミラーがシャルを名前で呼んだ事にシャルは一瞬呆然とした。
「マリアさん!少しよろしいですか!」
シャルはミラーの腕を掴んで教室の外に出た。
教室から出た二人はいつもの学園の人気のない場所へ移動した。
「急にこんな場所まで引っ張ってどうしたのよ?」
シャルに強引に連れてこられたミラーは人気のない場所まで引っ張られた腕を擦った。
「それはこっちの台詞です!自分があれだけ名前で呼ぶなと言ったのに急に私の名前を呼ぶなんて、どうしたんですか⁉」
シャルは今まで『セイレーン』と呼んでいたミラーがいきなり『シャリスティア』と呼んだ事に驚愕した。
「あら、でもこれでより《写し鏡》を探す時に余計な邪魔は入らなくなると思うけど?」
ミラーはシャルが声を荒げて言葉にした後、白々しい表情を浮かべてシャルに話す。
確かにミラーの言う通り互いに名前を呼び合う仲と認識された事で周囲の学生は前よりもシャルとミラーの仲を尊重して二人の時間をつくってくれるだろう。
「だからっていいんですか?あれだけ私と恋仲と思われるのを嫌がってたのに」
「現状は《写し鏡》を探す事が最優先。そのためならあんたと恋仲と勘違いされるくらい我慢するわ」
ミラーは苦笑してシャルと恋仲と勘違いされてでも《写し鏡》を見つけ出す事を伝えた。
「そうですか。ならさっさと《写し鏡》を見つけましょう。私もこれ以上勘違いされたままは気が重いので」
シャルも苦笑してミラーの話に賛同する。
お疲れ様です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。