第二十三話
ノクトは雷の魔術を発動してレイノスの周囲から雷撃の槍を放った。
ノクトが放った雷撃の槍をレイノスは聖剣術による光の刃を周囲に放ち全て相殺した。
雷撃の槍と光の刃が相殺されるとノクトは氷の剣を構えてレイノスへ間合いを詰める。
間合いを詰めてくるノクトにレイノスは聖剣を正眼に構えてノクトの間合いへ駆け寄った。
互いに間合いを詰めるとノクトは氷の剣を、レイノスは聖剣を互いに斬りかかる。
甲高いとを響かせて両者の剣が鍔迫り合いになる。すると氷の剣を中心に凄まじい冷気が周囲を凍てつかせた。
氷の剣と鍔迫り合いになっているレイノスの聖剣の刀身に一瞬で霜ができるとすぐに氷漬けになりレイノスが握っている柄まで氷が侵食していく。
レイノスはすぐに鍔迫り合いをしているノクトから離れて体まで氷漬けにされる事態を防いだ。
氷漬けになったレイノスの聖剣は刀身から凄まじい光を放ち出した。刀身から放たれる光の熱によって政権を氷漬けにした氷はすぐに解かされて元の状態に戻った。
光を纏った聖剣をレイノスはノクトの間合いを詰めて斬りかかる。斬りかかるレイノスの聖剣をノクトは氷の剣で受け流す。
氷の剣と聖剣が触れて受け流された直後、レイノスとノクトが立っている地点に落雷が落ちた。二人の元に落ちた落雷は凄まじい稲光と雷鳴を上げて二人を襲った。
落雷の衝撃で王宮の建物を振るわせて雷鳴を届かせた。
落雷を浴びたノクトとレイノスは互いに皮膚が焦げた状態で床に倒れていた。
落雷を浴びたレイノスは床に倒れたまま顔だけを上げた。
「……まさか、……自爆覚悟で俺に雷撃を落とすとは」
「……こうでもしないと……レイノスさんに攻撃を……当てられません」
顔を上げたレイノスがノクトの雷の魔術で自分巻き込んでの攻撃に驚いているとノクトは床に手を付いて立ち上がりながら口を開いた。
「……けど、俺は魔王の子孫。……人間であるレイノスさんより……体は頑丈にできてます」
レイノスが雷撃の痺れで自由に体が動かせない中、ノクトはゆっくりと立ち上がった。
「……これで決着はついた。……これで俺を殺せばお前の勝ちだ」
立ち上がったノクトにレイノスは目を閉じて話した。その表情はどこか満足そうな笑みを浮かべていた。
ノクトは氷の魔術を発動して氷の剣を手元に顕現させた。
「最後に聞いていいですか?地下牢の騒動はレイノスさんが起こした事ですか?」
ノクトは自身が脱獄する直前に怒った騒動についてもう一度尋ねた。
「……そうだ。……俺がやった」
「どうしてそこまでしたんですか?あの地下牢にいる囚人はどいつも罪を犯した罪人ですが、弄んでいい命ではないはずです」
氷の剣を握るノクトにレイノスは地下牢の騒動の犯人と認めると、ノクトはレイノスを苦渋の表情を浮かべて言葉を返した。
「……そうでもしないとお前は俺を殺そうとしないどころか、……脱獄すらしない。……だから地下牢でお前諸共囚人を襲った」
苦渋の表情を浮かべるノクトにレイノスは騒動を起こした理由の口にした。
「……これで気が済んだか?……なら早く俺をその剣で殺せ」
レイノスは狐狸の剣を握っているノクトに殺すように急かした。
ノクトは握った氷の剣をレイノスに向けた。レイノスに向けた氷の剣が震えていた。
氷の剣を握っているノクトは唇を噛みまだ師匠であるレイノスを殺す事に躊躇っていた。
「……最後に二つ伝えておく」
レイノスは声を絞ってノクトに言葉を伝える。
レイノスはノクトの雷撃の痺れが緩和されると同時に体の大部分が雷撃によって損傷してまともに立ち上がれない。予想以上にノクトの雷撃の威力が強かった。
レイノスは放っておけば直に死ぬ事を悟った。しかしそれを口にしなかった。
「……俺を殺さない限りノクトの教え子は……殺されるように呪いを仕込んだ。……だからここでノクトだけが逃げれば……教え子は必ず死ぬ」
レイノスから告げられた言葉にノクトは驚愕する。
「お前は……優しい奴だ。……だから他人の命を……弄んだ俺を殺すんだ」
レイノスは自身の罪を伝えてノクトに殺す気を掻き立てようとした。ノクトもレイノスの言動に裏があると薄々感じていた。だから今もレイノスに向けている氷の剣を突き刺せないでいる。
「……最後に……一言だけ……」
精神力だけで声を出していた口も回り出さなくなってきたレイノスは最後の力を振り絞り最後の言葉を口にする。
「……後は……頼んだ」
ノクトがレイノスの口から出てきた言葉を聞いた直後、レイノスは床に倒れたまま指一本として動かなくなった。その様子を見たノクトは膝を付きレイノスの顔に触れた。
ノクトが触れたレイノスの顔色は土のように血色が悪く、目の瞳孔も開いたままだった。
その時、ノクトは初めて自身を巻き込んで攻撃した雷撃でレイノスは瀕死の状態であったのを知った。
図らずもレイノスの計画通りにレイノスを殺したノクトは握っている氷の剣を床に突き刺した。
氷の剣を突き刺して下を見るノクトは歯を食いしばり嗚咽を零しながら涙を流した。
お疲れ様です、
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