第二十二話
レイノスが聖剣の切っ先をノクトへ向けると切っ先から光の砲撃が放たれた。
放たれた光の砲撃にノクトは瞬時に巨大な盾を顕現した。ノクトが顕現した盾は光の砲撃を真正面で受け止めるのではなく受け流すために盾の向きを逸らした。
レイノスが放った光の砲撃がノクトの盾に衝突すると、ノクトはさらに顕現した盾の向きを逸らした。
向きを逸らした盾に衝突した光の砲撃は進行方向を変えて王宮の壁を破壊して外へ飛んでいった。光の砲撃によって破壊された壁は溶岩のように舐め溶かされていた。光の砲撃を防いだ盾もばう部分が溶かされて次の攻撃を防げそうになかった。
「防げないと瞬時に理解して受け止めるのではなく受け流して砲撃を逸らす判断は正解だ。けどもう理解できただろう?俺は全力でノクトを殺そうとしていると」
顕現した盾を消失させたノクトはレイノスの言葉を聞く前に、防いだ光の砲撃もその前の聖剣の剣戟も本気でノクトを殺そうとした攻撃だった。
「どれだけ俺の攻撃を防ごうと後手に回っている時点で死ぬぞ。ノクト?」
レイノスの言葉を聞いてノクトは頭ではとっくに理解していいる。けれどノクトは未だにレイノスを殺す覚悟ができていない。
ノクトが覚悟を決めきれずにいるとレイノスは間髪入れずにノクトへ聖剣術を放つ。
ノクトは魔術で応戦してレイノスの聖剣術を相殺していく。
ノクトはレイノスの聖剣術を見事に防ぐが一向にレイノスへ攻撃を一切しなかった。
「どうした?俺に攻撃をしないのか?それなら抵抗せずに俺に殺されろ!」
攻撃の手を緩めないレイノスは若干苛立ちを覚えた口調でノクトに告げると、ノクトは苦汁を舐めた表情を浮かべた。
ノクトにとってレイノスは師匠であり、勇者になってからの親代わりの大切な人物だ。
そのレイノスが本気で自分を殺そうとしている。それだけでも押し潰されそうにな思いなのに自分が助かるためにはレイノスを殺さなけけばならない。
師匠に殺されるか、師匠を殺すか。
苦渋の選択に苛まれるノクトはレイノスを攻撃する判断ができないでいた。
「ここまで追い込まれているのに、まだ俺に攻撃をしないお前を弟子にした覚えはない」
そう言うとレイノスは聖剣術を防ぐノクトの左腕を聖剣で斬った。
「グッ⁉」
斬られた傷から血が噴き出す。聖剣によって切り傷の痛みによってノクトは顔を歪ませた。
「お前が判断を先延ばしにしたから迷いが生まれてお前は俺に斬られた。今のノクトが迫られている選択は俺に殺されるか、俺を殺すか、だ。この選択からお前は逃げられない」
斬られた箇所を押さえるノクトにレイノスは聖剣に付着した血飛沫を払って切っ先をノクトの首筋に突きつける。
首筋に突きつけられた切っ先を見たノクトは目を閉じた。
レイノスの目に映るノクトは諦めの表情を浮かべた。その様子を見たレイノスは聖剣でノクトの喉元を刺突しようとする。
聖剣の切っ先がノクトの喉元に刺さる寸前、喉元に聖剣を刺突するレイノスの腕から血飛沫が噴き出す。
「ガッ⁉」
レイノスは急に刺突する腕に奔る痛みにノクトに刺突する聖剣の軌道がずれてノクトに聖剣の刺突が命中しなかった。
ノクトの喉元に刺突するレイノスの腕から血飛沫を上げて貫いたのは風の弾丸だった。
レイノスの刺突の軌道が逸れるとノクトとレイノス殿間に巨大な岩石の槍が床から突出する。
レイノスは突出した岩石の槍を避けて距離を取った。
「やっと、俺を殺す気になったようだな?」
血が噴き出す腕の反対の手を傷口にかざして治癒魔術を発動した。傷口を塞ぐ応急処置を施したレイノスはノクトを見た。
レイノスの目に映るノクトはすでに手に氷でできた剣を握っていた。
「……まだ俺にはやるべきことがある。それまでは死ねない!」
氷の剣を握ったノクトは鋭い眼光でレイノスを見た。
殺気交じりの敵意を向けるノクトはレイノスに向けた。
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