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第十九話

 オミクロンと名乗る悪魔が王宮に侵入して三日が経過した。

 王国の地下室の独房には手枷と足枷を付けられたノクトが収監されていた。


 レイノスの転移魔術によってノクトとノクトの道連れでホホは強制的に独房に転移させられた。

 道連れで独房に転移させられたホホは収監されてすぐに上級騎士の手によって釈放された。


 ノクトはそのまま収監されたまま魔力を封じる枷を付けられて聖剣も没収されている。

 地下牢の出入り口の扉が開く音がすると地下牢に入ってくる足音がノクトの独房へと進む。


「今日も様子を見に来たんですか?レイノスさん?」


 足音がノクトの収監されている独房の前で止まるとノクトは足音の主を見ずに声をかけた。


「これも上からの命令だ。悪く思うな。ノクト」


 ノクトが足音の主を見ずにレイノスと言い当てると、レイノスはいつもと変わらない無骨な口調でノクトに言葉を返す。


「三年前より大人しくしてることは評価してほしいですけどね?」


 三年前にノクトと王宮の地下室の独房で会った時の事を話すとレイノスは鼻で笑った。


「そうだな。だがそれはお前の言動一つで誰かに報復が来ることを知ったからだろ?」


 レイノスが話すとノクトは苦笑する。


「そうですね。昔の俺のままならすぐにでもここから出るために本気でこの枷を壊して脱獄しているところです」


 ノクトは哀愁を纏いながら両手に取り付けられた手枷を触りながらレイノスに話す。


「やはり、その枷でもノクトの魔力を封じきれなくなっていたか」


 ノクトが触る枷を見ながらレイノスは想定していた事態が的中した。


「はい。王国最高級の魔力を縛る力を誇る魔術師を拘束する枷でも今の俺の魔力の半分も封じきれてないです」


 ノクトは右手の人差し指を伸ばすと人差し指の先から掌程の大きさの火の玉が生じた。

 ノクトは魔力を縛る枷を四肢に取り付けられているにも関わらず魔術を発動していた。

 発現させた火の玉を一瞬で消した、


「魔力を縛られて、なお魔術が使えるお前が脱獄しなかったのは殊勝な心掛けだとほめてやりたいが、お前に伝えなければならないことがある」

「何ですか?」


 レイノスが魔術が使えるのに脱獄しなかったノクトを称賛するがレイノスは真剣な表情を浮かべて言葉を切り出す。


「お前の亜人の教え子が収監された」

「ホホが⁉なぜですか⁉」


 レイノスから告げられた事にノクトは驚愕のあまり声を荒げた。


「ノクト。お前が国に背く行動に出ないための保険だろう。要は人質だ」


 レイノスから伝えられるホホの状況にノクトはレイノスの顔を凝視して苦渋に満ちたを浮かべた、


「お前がどれだけ憤りを感じようが上の人間はそんなことを気にしない。逆に利用するだけだ」


 苦渋に満ちたノクトにレイノスは現実を叩きつける。


「お前が脱獄してお前の教え子を助けでもしたらお前でなくお前の教え子が極刑に処される。その理由くらいは理解できるはずだ」


 現実を告げたレイノスが更にノクトへ現実を告げる。


「ノクトが勇者である限りお前を国は処刑することができない。だがお前の教え子は勇者ではない。国の力があればいくらでも冤罪をかけて体のいい処刑理由を着せられる」


レイノスが国の闇を語るとノクトは葉を騎士張り憤りで顔を歪ませる。


「だからノクト。お前に頼みたいことがある。今のお前にしかできないことだ」


 ノクトが苦渋に満ちた表情を浮かべる中、レイノスは声音を変えないまま、ノクトに頼みごとを言う。


「脱獄して国から逃亡するんだ」

「⁉」


 レイノスの頼みごとにノクトは耳を疑った。


「もちろんお前の教え子も一緒に脱獄させる手引きをする」

「何でレイノスさんがそんな頼みごとを俺にするんですか?」


 レイノスの頼みごとを聞いたノクトはレイノスに鋭い眼光を向けて質問する。


「ノクトには他国へ行って聖母教以外の聖典を集めてもらいたい。そのためにお前に脱獄してもらいたい」


 レイノスがノクトに国から逃亡するように頼んだ理由を伝えた。


「何で俺に他宗教の聖典を集める役目を頼むんですか?」


ノクトはなせ逃亡者になってまで他宗教の聖典を集めるように頼んだのかレイノスに尋ねる。


「お前がただの守られる側から大事なものを守る側に変わったから。俺がそう思ったからだ」


 ノクトの質問にレイノスは少し雰囲気が柔らかい言葉をノクトに話す。


「お前は三日前から今まで、すぐにでも脱獄できるのに周りの状況を理解して大人しく収監されたままでいた。それは自分だけでなく周りの大切な人々を思い案じていたからこそ取れた判断だ。お前が昔と変わらず自分だけにとらわれていたら俺はノクトに頼みごとをしなかった」


 レイノスの論理的でない説明にノクトは意外に思った。けれどなぜかレイノスの言葉は今までよりも心に響く。


「お前が他者を思いやる気持ちがある限りお前は俺が認めた一番弟子だ。そして脱獄をすれば俺は上からの命令でお前を半殺しにしても国へ連れて戻ることになる。その時は俺を殺してでも逃げ続けて聖典を集めて聖典の虚偽を探すんだ」


 レイノスから告げられた言葉にノクトはあまりの衝撃で表情が固まった。


「殺すって、どうして俺がレイノスさんを殺さないといけないんですか⁉」


 レイノスから告げられた衝撃の言葉を聞いたノクトはレイノスに声を荒げて反論する。


「俺を殺せばお前は王国の騎士では敵わないと王宮の上の人間は認識する。そして勇者同士は剣を交えることは聖典によって禁じられている。つまり脱獄した後に俺を殺せばそれ以上国からの襲撃は受けない。より他の聖典を収集する旅をしやすくなる」


 レイノスの説明にノクトは奥歯を食いしばる。


「だからって俺がレイノスさんを、師匠を殺すなんてできるわけがないです……」


 ノクトは下を向いて奥歯を食いしばっているとレイノスは口を開く。


「だったら俺がお前を殺すまでだ」


 下を向いたノクトの言葉にレイノスは冷徹な言葉を返す


「ノクトにその気がないなら俺がお前を全力で殺しにかかる。お前が俺の意志を託すに見合う人物かその時に確かめる。これは俺が課す最後の試練だ」

「だからって——」


 ノクトが話をする途中でレイノスはノクトが収監されている独房から去っていき地下室から出て行く。


「脱獄の決行は四日後。それまでに腹を括れ」


 そう言うとレイノスは地下室から完全に姿を消した。

お疲れ様です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

これからも投稿指定金すので良ければ次話も読んで下さい。

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