第二十三話(裏)
マリアの部屋に再び魔法陣が浮かび上がると光の柱と共にシャルが現れた。
「お待たせしました。マリアさん」
光の柱から現れたシャルは部屋で立っているマリアに視線を合わせて声をかけた。
「とか言って、たったの数秒で戻ってきたけど、あの仮面の奴はどうなったの?」
姿を現して声をかけたシャルが視線を合わすとマリアは声を返す。
「私の魔術と神聖術を組み合わせた幻術で精神拷問を受けています」
「あんたって本当に容赦ないわね?」
襲撃してきた白髪の仮面がシャルの幻術による拷問を受けていると聞いたマリアは少し顔色を青ざめた様子でシャルに言葉を返す。
「まだ別空間で拷問中なのでまだ尋問はしてないのですが、渡した術式の解読の進捗どうですか?」
シャルは先日渡した破られたページに刻まれた古代の術式の解読の進捗度合を尋ねた。
「意外と早く解読は進んでるわ。完全に解読できたわけじゃないけど、この術式が何の用途の術式か具体的に分かったわ」
「それで、この術式は何の鍵なんですか?」
マリアの話を聞いたシャルはマリアが手に持っている破られたページを見ながら質問する。
「特定の場所で発動させると学園の法具を保管する宝物庫へ繋がる鍵の術式よ」
マリアから術式の正体を聞いたシャルは目を大きくした。
「けれどそれはこの術式を発動できたらの話。前にも言ったけど私は解読はできても発動できない。おそらく仮面の奴はこの術式を発動できる。けど解読できないから私に解読させて術式の用途を知ろうとした」
マリアが術式を使える白髪の仮面がマリアに術式を解読させた理由を口にする。
口にしたマリアは術式が刻まれたページをシャルに渡すために前に出す。
「あんたなら古代の神聖術式の仕組みを知れば使えるんじゃない?」
「簡単に言ってくれますけど、その仕組みが分からない私にどうしろと言うんですか?」
術式が刻まれたページを受け取ったシャルはマリアの言葉に少し困り顔で言葉を返す。
「それこそ今拷問してる仮面の奴に尋問したら?あんたはあの仮面に聞きたいことが山ほどあるんでしょ?」
マリアの言葉をシャルは口を閉じたまま聞いていた。
「マリアさんは仮面の人を尋問して自分の素性を聞かれるって思わないんですか?」
シャルが口を開くとマリアに恐る恐る質問する。
「私はあんたと違って誰から私の素性を聞かれようと気にしない。私と違ってあんたは人の素性を知って対応を変える程薄情な人間だと思わないから」
恐る恐るシャルが質問するとマリアはシャルの目を見てはきはきと話す。
はきはきと話すマリアは真剣な眼差しを向けてシャルの質問に答える。
「それは私のことを信用してくれたってことですか?」
「それこそ詰めの甘い考えよ。私はあんたから本心を全て聞いてない。あんたが全部話したら信用してもいい」
マリアの言葉を聞いたシャルは少し嬉しそうな表情を浮かべて言葉にするがマリアは依然と真剣な眼差しをシャルに向けた。
マリアの言葉に何も言葉を返せなくなったシャルはそのまま動きが止まった。
「今まで言えなかったことを言ってくれるまで待つのが友達なんでしょ?だったら私もそれまで私も待つわ」
動きを止めたシャルにマリアは椅子に座って机に向き合うとシャルに言葉を告げる。
その瞬間、マリアは自分で言って恥ずかしそうな表情を浮かべていた。
マリアの言葉を聞いたシャルは安堵した表情を浮かべた。
「分かりました。マリアさんと同じで私も偽名を使って学園に籍を置いてます。私が今話せる本当のことを少しだけ言います」
シャルはマリアに笑みを浮かべて口を開く。
「私の本名はシャルロット。孤児だったのでファミリーネームはないです」
マリアはシャルの顔を見て口にした言葉を聞いた。マリアは何とも言えない表情を浮かべてシャルを見ているとすぐに表情を変えて口を開く。
「もう少しは本名とかけ離れた綴りの偽名にしたらどうなの?」
マリアは呆れたような、それでいてどこか笑っているような表情を浮かべた。
「でもやっと互いに本当の名前を知れたわね?シャルロット」
マリアが椅子から立ち上がりシャルの目の前に立った。
「そうですね。ミラーさん」
ミラーと話をするシャルは嬉しそうな明るい声音で言葉を返す。
「そうだ。帰る時は窓を直してから帰ってね?シャルロットが壊したんだったら責任もって直してよ」
ミラーは蹴破られて窓ガラスが飛散する床を見てシャルに頼んだ。
「分かってますよ。私を何だと思ってるんですか?」
「部屋に入るのに窓を蹴破ったバカと思ってるけど?」
シャルの質問にミラーは素直に思った印象を伝えた。
そう言っていると外は雲に隠れていた月が姿を現して再び部屋に着き光が差し込んだ。
お疲れ様です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。