第十七話(表裏)
「……ここは?」
ノクトは目を開くと集会の間とは別の場所だという事に気付く。
ノクトは上半身を起こして周りを見ると王宮の医務院だった。そして自分が医務院のベッドの上にいる事も分かった。
ノクトは周りを見回した時、ベッドの傍で椅子に座りながらベッドに上半身を預けて寝息を立てていたホホを見つけた。
「ようやく目を覚ましましたね。ノクト?」
ホホを視界に知れていた時に医務院の部屋の奥から声が聞こえた。
ノクトは声が聞こえた方へ視線を変えるとそこにはシルフィーがいた。
「確か、俺……」
ノクトは医務院のベッドで横になる前の事を思い出そうとする。
「私の手に持っていた魔王の魔力の欠片の魔石から漏れ出た魔力から私を守ってそのまま倒れたのです」
シルフィーの話を聞いてノクトは全て思い出した。
ノクトは集会の間でシルフィーの持っていた魔王の魔力の欠片の魔石に亀裂が入り漏れ出して襲い掛かるどす黒い魔力から身代わりになった。
その時にまた魔王の魔力の一部を体内に吸収してしまった。
「これで勇者側が保有していた魔王の魔力全てが俺の体の中ってことか」
ノクトは魔王の魔力がシルフィーの首元に巻き付こうとして掴んで止めた手を見ながら自虐的な声音で言葉を発する。
「あなたが倒れている間に検査を行ったそうです。結果はどこも異常がないそうです」
シルフィーはノクトを見て倒れている間に行った検査の結果を伝えた。
「ありがとうございます」
シルフィーは頭を下げてベッドの上のノクトにお礼を言った。
「ノクトが助けてくれなければ私を含めてお国王や教皇まで魔王の魔力に蝕まれて、最悪命を落としていたかもしれません。あなたは命の恩人です」
「やめてくれよ。あれは俺の独断が結果そうなっただけだ。それにシルフィーの言うようにこれで魔王側との接点がなくなってしまった。すまない」
頭を下げて感謝を伝えたシルフィーに対して魔王側の手掛かりを失っってしまった事に謝罪するノクトはベッドの上で頭を下げた。
「それは気にする必要ありません。私達の手から魔王の魔力が全て魔王側に奪われたわけではありません。魔王の魔力がノクトの体内にある以上、私達はノクトを護衛すれば問題ありません」
シルフィーは頭を上げてすぐにノクトの謝罪に返事を返す。
「この俺が護衛されるのは変な気分だがシルフィーが言うことも納得できる。ありがとう、シルフィー。わざわざ医務院まで付き添ってもらって」
「感謝を言う相手は私でなくそこの教え子さんに行った方が良いですよ。私が来るより前にずっとノクトの傍で看病していたのですから」
ノクトがシルフィーにお礼を言うとシルフィーは視線をホホに向けてホホがノクトを看病してくれた事を伝える。
「良い教え子を持ちましたね。ノクト。あれほど恐ろしい経験をしたはずなのに献身的に看病してくれる子はそうそういないです。翻訳本をノクトに渡せばこれ以上危険が及ばないはずなのにノクトの下で魔法薬を学ぼうとする度胸は尊敬に値します」
シルフィーがホホを見ながらホホを褒めているとノクトは手を伸ばしてホホの肩を寄せる。
「おい。お前は誰だ?」
ノクトは今までとは雰囲気が変わり警戒心を剥き出しにしてシルフィーを見た。
「急に何を言って——」
「確かに俺はシルフィーにホホと出会って旅に同行ぢている経緯は話した。けどホホが悪魔に狙われた原因の本について悪魔が話していた呼び方をシルフィーに一言も喋っていない」
シルフィーがノクトの言っている言葉の意味が分からず口を挟もうとする途中、ノクトはそれを気にせず視界に映るシルフィーに話す。
ノクトは招集前にシルフィーと話していた時に話していない言葉がシルフィーから出てきた事に強い違和感を感じた。
ノクトが違和感を感じた点をシルフィーに話した途端ノクトの視界に映るシルフィーは息を吐いた。
「流石はノクト様。ただの会話で私の完璧な変化を見抜くとは感服致します」
ノクトの視界に映るシルフィーに成り済ましている者から黒い炎が立ち上り全身を覆った。
覆われた黒い炎から枯れ枝のようにほの意腕と脚が伸びて人間とは到底思えない異形の顔が現れる。
「……やはり、悪魔か!」
警戒心を向き出すノクトにシルフィーに成りすましていた者は悪魔特有の黒い外套と異形の顔をノクトに見せた。
「初めまして。ノクト様。私はオミクロンと申します」
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